東京書籍が発行する高校社会の教育情報誌 ニューサポート高校「社会」vol.37(2022年春号)に、「大地形と資源:石油はどこでとれるのか?」というコラムを書かせていただきました。

低温科学研究所が推進する共同研究「陸海結合システム:沿岸域の生物生産特性を制御する栄養物質のストイキオメトリー」(代表: 長尾誠也 金沢大学)の一環として、3月24日から27日にかけて今年最初の別寒辺牛川の流量観測を実施しました。別寒辺牛川、厚岸湖、厚岸湾、沿岸親潮を対象とした川と外洋をつなぐ物質の流れを捉えるための観測です。昨年の10月5日〜7日の3日間にわたって観測を行った最下流部の観測断面(RB3)に超音波ドップラー流速プロファイラー(Sontek IQ plus)を設置し、3月24日17:00から3月26日14:00までの小潮時に5分インターバルで流量データを測定しました。この観測に加え、3月25日と3月26日の下潮時に超音波流速計(Sontek RiverSurveyor M9)を用いて横断面の流量観測を行い、インデックス法を用いることでIQ plusで取得した流量の時系列データを補正しました。その結果、観測期間には約1,000,000立法米/日の淡水流出があったことが判明しました。昨年の10月初旬の大潮時には、降雨直後だったこともあり、約2,000,000立法米/日の流出量がありましたので、今回の流出量はおおよそ半分であったことになります。実は、今回の観測は春の融雪洪水を狙って計画したのですが、観測を行った3月24-26日は、まだ融雪があまり進んでおらず、むしろ冬季の終わりを代表するような流況でした。3月26日の夜半に低気圧が道東を通過したことにより激しい風雨がありました。その結果、3月27日には河川流量が増加したことを現地で確認しています。ただし、この河川流量の増加によって、本流と支流の上流から、たくさんの氷塊が流下を始め、カヌーで観測を実施するにはあまりに危険な状態となりました。このため、増水以降の流量データは観測できていません。融雪洪水時の流量観測は今後の課題です。
 この河川観測には、北海道大学低温科学研究所、北海道大学北方圏フィールド科学センター、同厚岸臨海実験所に関わる研究者と学生が参加しました。観測にあたっては、厚岸水鳥観察館の皆様にたいへんお世話になりました。記して感謝申し上げます。

別寒辺牛川と支流の大別川の合流点の空撮画像:大別川上流から流れてきた河氷がJR根室本線の橋脚で堰き止められている状況

例年は北海道でもっとも寒い母子里(もしり)に行き、泊まりがけで行う雪氷実習IIですが、昨年に続き、今年も札幌で開催することになりました。2週間の期間にわたり、北大キャンパスや札幌近郊の手稲山を舞台に、積雪断面観測、広域積雪観測、積雪・土壌熱輸送観測、気象観測を体験します。今年参加した大学院生は12名。札幌だけでなく、函館や名寄からの参加者もおりました。

私が主に担当したのは、積雪・土壌内での熱輸送の観測です。12月中旬に北大キャンパスの農場に設置した合計8深度の地温計・雪温計のデータから、鉛直一次元の熱輸送を計算し、積雪下面における熱収支を求めるという課題でした。

年末からの積雪により、今年は雪に悩まされる札幌の街ですが、雪氷実習にとっては幸いでした。広域積雪調査では、手稲山の麓からスキー場に至る高度別の積雪深・積雪水量観測を実施し、標高でこれらのパラメータがどのように変化するかを学びました。

来年こそ、母子里の実習が復活し、大学院生の皆さんに-20℃の世界を体験してもらいたいと思っています。

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新年明けましておめでとうございます。
札幌は年末から降り始めた雪で、すっかり白い街に変わりました。毎日低温が続いており、北海道らしい新年の始まりです。

コロナウィルスとの付き合いも、そろそろ2年になります。オミクロン株の市中感染が各地から報告されており、まだまだコロナウィルスに翻弄される日々が続きそうですが、これまで学んだコロナウィルスの性質を理解して、感染対策を続けながら、できるだけ通常の生活に戻っていきたいと思っています。

来月には2名の修論生が修士研究を発表すべく、最後の追い込みにかかっています。2名の博士課程の学生は、2022年度中の博士論文の提出を目指して、解析を続けています。修士1年生の二人は、正月休みを山で過ごしたようです。4月には、新たに2名の修士学生を研究室に迎える予定です。個性豊かな学生が研究活動に専念できるよう、できるだけのサポートをしていくつもりです。

研究室では、1月下旬の道東での結氷河川の観測を皮切りに、今年も積極的に野外での観測・調査を行います。3月は融雪出水をとらえるべく、同じ道東の河川で観測を行います。4月になると、山の雪も落ち着いてきますので、昨年から始めた羊蹄山山頂の永久凍土調査の開始です。6月には知床半島の調査地にもアクセスができるようになりますので、海岸漂着ごみの調査が開始される予定です。

このような感じで、今年も当研究室では、北海道の各地で研究を継続します。そして、コロナ禍が落ち着いたら、いよいよ中断していたロシア極東での観測活動の再開です。

今年もよろしくお願いいたします。

今年は6月下旬と10月中旬に知床のオホーツク海沿岸で海岸漂着ごみの調査を実施しました。調査地はすでに積雪のために入域できないため、今回は今年最後の調査として、12月5日〜8日にかけて、当地で海岸漂着ごみに関わる人々に聞き取り調査を実施しました。聞き取り調査の対象は、地方自治体、漁業協同組合、環境省自然保護官、ボランティア、管理団体などの諸機関・関係者です。

海岸漂着ごみは、誰しもが問題と思っていながらも、責任の所在があいまいであることや処理のための予算が必要であることにより、なかなか解決が難しい問題です。ましてや、知床世界自然遺産内は、険しい自然と世界自然遺産の管理体制により、誰でも簡単にアクセスできるわけではないので、回収も一筋縄ではいきません。聞き取り調査により、それぞれの機関や関係者が多くの努力を割いているにもかかわらず、なかなか解決には至っていないことがわかりました。

我々の役割は、自然科学的な方法に基づいて、漂着ごみの経年モニタリングのデータから、漂着ごみの質量収支の時間変化を明らかにすることです。漂着ごみの内容物、体積と重量、堆積・侵食のメカニズムと発生時期が明らかになれば、回収のタイミングや回収の頻度などについて、実際に漂着ごみ問題の解決に取り組む人々に情報を提供できるのではないかと考えています。

皆さんから聞き取った情報を参考にしながら、来年度も調査を継続したいと思っています。なお、本研究は、当研究室の西川穂波の修士研究として実施しました。調査は晴天に恵まれ、冠雪した美しい知床連山を仰ぎながら実施できました。調査にご協力くださった関係諸機関・個人の皆様に心よりお礼申し上げます。

先日、全国の自然地理学を専攻する大学生・大学院生を対象としたオンラインセミナーでアムール川とオホーツク海を対象とする魚付き林の話をさせていただきました。講演終了後、1人の学生さんから勉強に使えそうな教科書を訊ねられましたので、以下、最初に読んだら勉強になりそうな本を列記します。これらの本で概略を知った後に関連論文を読んだら良いと思います。

山下洋監修・京都大学フィールド科学教育研究センター編集(2011)「[改訂増補] 森里海連環学: 森から海までの統合的管理を目指して」京都大学学術出版会

向井宏監修・京都大学フィールド科学教育研究センター編集(2012)「森と海をむすぶ川: 沿岸域再生のために」京都大学学術出版会

松永勝彦著 (2010) 「森が消えれば海も死ぬ―陸と海を結ぶ生態学 第2版」 講談社 ブルーバックス

川那部浩哉監修・水野信彦監修・中村太士編集 (2013) 「河川生態学」 講談社

以上

「全国の自然地理学に興味をもつ学生が一堂に会して、自然地理学の俯瞰的な視点とその意義や魅力を知る」ことを目的にオンラインで運営されている自然地理学セミナーでお話しさせていただける機会をいただきました。12月11日(土) 13:00-14:30です。「陸と海をつなぐ地理学」というタイトルで、魚つき林の話をさせていただく予定です。全国の自然地理学を専攻する学部生・院生の皆さんと交流するのを楽しみにしています。参加希望の皆さんは、指導教員ないしウェブサイトの事務局を通じてお申し込みください。

少し古い資料ですが、三井物産環境基金(2011-2013)にご支援いただき実行したプロジェクトの報告書を公開させていただきます。

アムール・オホーツクコンソーシアム編
「オホーツク海の越境環境保全に向けた認識共同体の構築と実践」

自然科学研究で得られた成果を社会に還元するための一つの試みです。

10月初旬に訪れた北海道東部の別寒辺牛(べかんべうし)川流域の河川調査を再度実施しました。今回は、研究室の大学院生2名と一緒です。期間は11月8日から12日の5日間でした。このところの不順な天候のため、別寒辺牛川の増水が心配でしたが、案の定、10月初旬とさほど変わらぬ高い水位に悩まされました。今回の調査の目的は、大きく分けて3つあります。ひとつは、7月から開始した上流域の水位観測データを回収することです。チャンベツ川、別寒辺牛川、トライベツ川の三つの支流にそれぞれ水位計を設置しましたが、10月初旬は水位が高く、これらの機材を回収することができませんでした。今回は、冬が来る前になんとしても機材を撤収し、7月以降の水位・水温データを回収する必要がありました。この仕事は、博士課程2年の丁さんが主に担当しました。一桁しかない水温の河川に入って機材を回収する作業は、ドライスーツを着ていても大変つらい作業です。丁さんの頑張りにより、これらの3つの水位計は全て回収され、7月以降の上流域における水位・水温データの取得に成功しました。二つ目の課題は、ここ数年流量観測を継続しているRB1と名付けた中流域の観測点での流量の連続観測です。この観測には、ADCPと呼ばれる係留型の観測機材を河床に設置する必要があるのですが、RB1の水位は観測が可能な水位を越えており、残念ながらこの課題は断念せざるを得ませんでした。三つ目は、修士課程1年の竹内さんが取り組んでいる流域の各地点における河川水中のCDOM濃度の観測です。CDOMセンサーと呼ばれる機材で現場の河川水中のCDOM濃度を測定すると同時に、河川水を採水し、厚岸にある北海道大学の臨海実験所において、採水した水試料の吸光度を測定します。これにより、CDOMセンサーで測定した値をCDOM濃度に換算することが可能となります。CDOMは衛星観測によっても追跡できるので、現場で得た河川水のCDOM濃度をリファレンスとし、別寒辺牛川から厚岸湖・厚岸湾に流出するCDOMを衛星データで追跡することが竹内さんの修士論文のテーマです。
 以上、今回の観測はできなかったこともありましたが、予定していた観測の多くを完了することができました。今後は、別寒辺牛川が結氷する1月中旬以降、および3月の融雪洪水時に同様な観測を実施する予定です。今回の観測では、いつものように北海道大学厚岸臨海実験所、ならびに水鳥観察館にお世話になりました。仲岡教授、伊佐田准教授、澁谷さんを始めとするスタッフの皆様に感謝いたします。

RB0水位計回収

降雪の便りが各地から届き始めた10月下旬、北海道最北端の湿原で調査を行いました。今回は、岐阜大学の研究グループのサポートです。天候に恵まれ、黄金色に輝く湿原は、美しさと静寂を併せ持っていました。まもなくこの湿原も深い積雪に覆われます。

湿原調査