3月上旬に観測地を訪ねた際に切断されていた地温計のケーブルを交換するために、3月30日に再び猿払川中流の湿原をひとりで訪ねました。今回は徒歩での訪問。雪に覆われた林道をおよそ6km歩いて、観測地に到着。積雪上には冬眠から目覚めたヒグマの足跡が残っておりました。前回は1mほどあった積雪も、この1ケ月で40cmほどに減っており、交換のために持参した地温センサーを無事に設置することができました。
3月初旬に訪ねた際には、まだ厚い積雪に覆われて川面の見えなかった猿払川も、中心部に凍結部を残して両岸付近では融解水が流れ始めていました。長い冬から目覚めた猿払川。これから初夏にかけて、イトウが遡り、本流・支流の各所で産卵が始まります。次の観測は5月上旬です。
昨年から観測を行っている道北の湿原を訪ねました。この時期、湿原に隣接する道路は閉鎖されているため、アクセスは徒歩かスノーモービルとなります。観測に必要な機材を徒歩で運ぶことは難しく、今回は地元の方にお願いしてスノーモービルを使用しました。到着した湿原はおおよそ1mの積雪に覆われていましたが、幸い、我々が設置した4本の井戸は頭を10cmほど積雪から出しており、すぐに位置を確認することができました。さっそく井戸から地下水を採取しました。地温計を掘り出してみると、残念ながら8本のセンサーのうち、5本のセンサーケーブルが切断していました。記録を見ると、2月中旬に切断が生じたようです。おそらくは2月中旬の暖気によって急速に融雪が進み、その際、データロガーを保管しているクーラーボックスが転倒し、これによってケーブルに大きな力がかかって破断したものと思われます。幸い、昨秋からの連続データは保管されていましたので、冬季の湿原内部の温度分布を観測することに成功しました。今は、できるだけ早く観測地を再訪し、地温計の再設置を行うべく準備を進めているところです。
近年地球温暖化、気候変動という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。永久凍土の融解や氷河の後退など、世界では色々な例が報告されています。それでは実際に日本ではどのようなことが生じているのでしょうか。山岳地域は環境変化が現れやすいと考えられている地域のひとつです。そこで日本最北の地にある北海道の山岳地域を対象にした一般向けの研究発表会を企画しました。動植物をはじめとする広い分野の研究成果を聞くことが出来ます。
日時:2024年3月2日 9:20-17:40
場所:北海道大学低温科学研究所 講堂(札幌市北区北19条西8丁目)
主催:岩花 剛(北海道大学・アラスカ大)・白岩孝行(北海道大学)・曽根敏雄(氷河・雪氷圏環境研究舎)
後援:日本雪氷学会北海道支部、北海道地理学会、北海道大学北極域研究センター、(NPO)氷河・雪氷圏環境研究舎
参加登録:https://alaska.zoom.us/meeting/register/tZYqdemrrjMvGNZ-vGy1piwdrXqWRaHpLbue
参加無料ですが、参加には事前登録が必要です。
第二部招待講演(13:15-)については、WEB配信を行います。
連絡先:giwahana@alaska.edu 岩花 剛(北大・アラスカ大)
今年も北海道大学大学院 環境科学院 地球圏科学専攻 雪氷・寒冷圏コースが実施する雪氷実習IIの引率で、1月23日から26日にかけて北海道北部にある雨龍研究林に8名の大学院生と共に出かけてきました。タイミングが悪く、実習期間中は低気圧の通過と強い冬型の気圧配置によって、北海道全域で吹雪が吹き荒れましたが、幸い、実習を行った母子里付近は実習期間中穏やかな天気でした。盆地特有の放射冷却の観測、積雪断面観察、森林内の植生観察、広域積雪観測という4つのプログラムが実施され、大学院生は観測・観察の方法とデータの取りまとめを学習しました。最終日は、それぞれのグループが成果を発表し、今年も無事に雪氷実習を終えることができました。
実習の実施にあたっては、北海道大学 北方圏フィールド科学センターと雨龍研究林にたいへんお世話になりました。
環境省・(独)環境再生保全機構からの委託による環境研究総合推進費「世界自然遺産・知床をはじめとするオホーツク海南部海域の海氷・海洋変動予測と海洋生態系への気候変動リスク評価」の成果に基づく公開シンポジウムを開催します。
開催日:2024年3月14日(木)13:00-17:00
開催場所:北海道大学 低温科学研究所 3階講堂(オンライン配信あり)
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13:00-13:30「知床から流氷は消えるのか!?」 三寺史夫(北海道大学)
13:30-14:00「オホーツク海における海氷の年々変動を引き起こすメカニズム」 植田宏昭(筑波大学)
14:00-14:30「知床の海をモニターする」中村知裕(北海道大学)
14:30-15:00「流氷が豊かな生物生産を生み出す仕組み」 西岡 純(北海道大学)
15:00-15:30「海氷勢力の変化に対する生物の応答」 山村織生(北海道大学)
15:45-17:00 パネルディスカッション 白岩孝行(北海道大学)
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申込方法|こちらのURLからお申し込みください
申込締切|2024年3月8日(金)まで
会場 60名 Zoom 200名 定員になり次第締め切り
問合せ先|shiretoko2024@gmail.com
主催|北海道大学 低温科学研究所
共催|公益財団法人 知床財団
Shi, M. and Shiraiwa, T. (2023) Estimating future streamflow under climate and land use change conditions in northeastern Hokkaido, Japan. Journal of Hydrology: Regional Studies. 50, December 2023, 101555, https://doi.org/10.1016/j.ejrh.2023.101555
アムール川がオホーツク海に輸送する溶存鉄の供給源として、永久凍土をもつ湿地が重要であり、気候変動によって永久凍土が変化することによって河川に流出する鉄も変化する可能性があることを現地での観測から見出し、論文として出版しました。
どう変化するかを更に突き止めようと、新たな調査計画を練っている時に、コロナ禍が始まり、更にはロシアのウクライナ侵攻が起きました。当面、ロシアでの現地調査は無理と判断し、代替地として季節凍土が発達する北海道の湿地に目をつけ、民間企業の保有する道北の湿地を実験地として使わせていただけることになり、この一週間、岐阜大学と名古屋大学の研究者と共に湿原を掘削し、4本の井戸を設置しました。これから数年にわたり、これらの井戸の地下水と河川水を定期的に採取して、積雪や凍結が溶存鉄流出に及ぼす影響を調べます。
今年も、北海道大学大学院 環境科学院の国際南極大学カリキュラムのひとつに位置付けられているスイス氷河実習に引率教員として参加させていただきました。
杉山慎教授をリーダーに、私と大学院生7名の総勢9名が8月26日から9月9日にかけて、)スイス連邦工科大学における氷河に関する講義受講; 2)ベルナーオーバーラントでの下グリンデルワルド氷河とアレッチ氷河の観察、ならびにユングフラウヨッホ高地観測所訪問; 3)ローヌ氷河における氷河・気象・水文観測実習; 4)ゴルナーグラートからのポリサーマル氷河の観察; 5)観測結果の報告ならびにスイス連邦工科大学における氷河と気候に関する講義受講、という5つのプログラムをこなしました。
到着時はチューリッヒで豪雨、山では新雪という悪天に遭遇しましたが、その後は好天に恵まれ、新雪に覆われた白銀のアルプスを満喫できました。大学院生も、スイスの氷河、山、スイス連邦工科大学でのキャンパスライフなどを満喫できたと思います。2022年に引き続き、2023年も小雪と酷暑により、氷河は後退を続けています。
Tashiro, Y., Yoh, M., Shesterkin, V.P., Shiraiwa, T., Onishi, T. and Naito, D. (2023) Permafrost wetlands are sources of dissolved iron and dissolved organic carbon to the Amur-mid rivers in summer. Journal of Geophysical Research: Biogeosciences, 128, e2023JG007481. https://doi.org/10.1029/2023JG007481
今年度から環境科学院環境起学専攻の修士1年生としてセンターの活動に参加して修士研究を開始した雫田さんの最初の野外観測として、道東の別寒辺牛川流域を訪ねました。過疎化が進む中山間地の活性化に興味を持っている雫田さんが模索するテーマは、河川における懸濁物質の挙動です。今回は最初の調査ということもあり、マルチ水質計(YSI Pro DSS)を使用して、流域の広範囲にわたって降雨後の濁度、pH、溶存酸素濃度、電気伝導度、水温等の測定を実施し、湿原河川の懸濁物質研究の焦点を絞るための基礎データを収集しました。天気に恵まれ、参加者は初夏の湿原を満喫できました。観測にあたっては、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所(所長 仲岡雅裕教授)と厚岸水鳥観察館にお世話になりました。記して感謝申し上げます。