Archive for the ‘outreach’ Category

北海道の山岳研究 -日本国内の極域環境変化-

近年地球温暖化、気候変動という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。永久凍土の融解や氷河の後退など、世界では色々な例が報告されています。それでは実際に日本ではどのようなことが生じているのでしょうか。山岳地域は環境変化が現れやすいと考えられている地域のひとつです。そこで日本最北の地にある北海道の山岳地域を対象にした一般向けの研究発表会を企画しました。動植物をはじめとする広い分野の研究成果を聞くことが出来ます。

日時:2024年3月2日 9:20-17:40
場所:北海道大学低温科学研究所 講堂(札幌市北区北19条西8丁目)
主催:岩花 剛(北海道大学・アラスカ大)・白岩孝行(北海道大学)・曽根敏雄(氷河・雪氷圏環境研究舎)
後援:日本雪氷学会北海道支部、北海道地理学会、北海道大学北極域研究センター、(NPO)氷河・雪氷圏環境研究舎
参加登録:https://alaska.zoom.us/meeting/register/tZYqdemrrjMvGNZ-vGy1piwdrXqWRaHpLbue
参加無料ですが、参加には事前登録が必要です。
第二部招待講演(13:15-)については、WEB配信を行います。
連絡先:giwahana@alaska.edu 岩花 剛(北大・アラスカ大)

北海道の山岳研究

今年も北海道大学大学院 環境科学院 地球圏科学専攻 雪氷・寒冷圏コースが実施する雪氷実習IIの引率で、1月23日から26日にかけて北海道北部にある雨龍研究林に8名の大学院生と共に出かけてきました。タイミングが悪く、実習期間中は低気圧の通過と強い冬型の気圧配置によって、北海道全域で吹雪が吹き荒れましたが、幸い、実習を行った母子里付近は実習期間中穏やかな天気でした。盆地特有の放射冷却の観測、積雪断面観察、森林内の植生観察、広域積雪観測という4つのプログラムが実施され、大学院生は観測・観察の方法とデータの取りまとめを学習しました。最終日は、それぞれのグループが成果を発表し、今年も無事に雪氷実習を終えることができました。
 実習の実施にあたっては、北海道大学 北方圏フィールド科学センター雨龍研究林にたいへんお世話になりました。

母子里

環境省・(独)環境再生保全機構からの委託による環境研究総合推進費「世界自然遺産・知床をはじめとするオホーツク海南部海域の海氷・海洋変動予測と海洋生態系への気候変動リスク評価」の成果に基づく公開シンポジウムを開催します。
開催日:2024年3月14日(木)13:00-17:00
開催場所:北海道大学 低温科学研究所 3階講堂(オンライン配信あり)
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13:00-13:30「知床から流氷は消えるのか!?」 三寺史夫(北海道大学)
13:30-14:00「オホーツク海における海氷の年々変動を引き起こすメカニズム」 植田宏昭(筑波大学)
14:00-14:30「知床の海をモニターする」中村知裕(北海道大学)
14:30-15:00「流氷が豊かな生物生産を生み出す仕組み」 西岡 純(北海道大学)
15:00-15:30「海氷勢力の変化に対する生物の応答」  山村織生(北海道大学)
15:45-17:00 パネルディスカッション  白岩孝行(北海道大学)
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申込方法|こちらのURLからお申し込みください
申込締切|2024年3月8日(金)まで 
会場 60名 Zoom 200名 定員になり次第締め切り
問合せ先|shiretoko2024@gmail.com
主催|北海道大学 低温科学研究所
共催|公益財団法人 知床財団

知床シンポ

今年も、北海道大学大学院 環境科学院の国際南極大学カリキュラムのひとつに位置付けられているスイス氷河実習に引率教員として参加させていただきました。
 杉山慎教授をリーダーに、私と大学院生7名の総勢9名が8月26日から9月9日にかけて、)スイス連邦工科大学における氷河に関する講義受講; 2)ベルナーオーバーラントでの下グリンデルワルド氷河とアレッチ氷河の観察、ならびにユングフラウヨッホ高地観測所訪問; 3)ローヌ氷河における氷河・気象・水文観測実習; 4)ゴルナーグラートからのポリサーマル氷河の観察; 5)観測結果の報告ならびにスイス連邦工科大学における氷河と気候に関する講義受講、という5つのプログラムをこなしました。
 到着時はチューリッヒで豪雨、山では新雪という悪天に遭遇しましたが、その後は好天に恵まれ、新雪に覆われた白銀のアルプスを満喫できました。大学院生も、スイスの氷河、山、スイス連邦工科大学でのキャンパスライフなどを満喫できたと思います。2022年に引き続き、2023年も小雪と酷暑により、氷河は後退を続けています。

ヘルンリ尾根

東京書籍が発行する高校社会の教育情報誌 ニューサポート高校「社会」vol.39(2023年春号)に、「安定地域の大地形」というコラムを書かせていただきました。

 8月27日から9月10日にかけての2週間、スイスにおいて大学院生を対象とした氷河実習を行いました。この実習は、北海道大学大学院 環境科学院の国際南極大学カリキュラムのひとつに位置付けられたものです。過去の活動はこちらでご覧ください。
 コロナ禍で2020年と2021年の開催が中止となっていたため、2019年に実施して以来、3年ぶりの実施となりました。杉山慎教授をリーダーとして、私と大学院生6名に加え、スイス連邦工科大学に留学中の日本人大学院生が1名加わり、合計9名での実習となりました。
 実習は5つのプログラムから構成されています。1)スイス連邦工科大学において氷河に関する講義を受講; 2)ベルナーオーバーラントで下グリンデルワルド氷河とアレッチ氷河の観察、ならびにユングフラウヨッホ高地観測所訪問; 3)ローヌ氷河における氷河・気象・水文観測実習; 4)ゴルナーグラートからのポリサーマル氷河の観察; 5)観測結果の報告ならびにスイス連邦工科大学における氷河と気候に関する講義受講。
 例年にも増して良い天気に恵まれ、参加者はスイスの氷河、山、生活を満喫できたと思います。2022年は小雪と例年にない酷暑により、氷河は更に後退したもようです。温暖化は、スイスの氷河や永久凍土の分布に大きく影響しているようです。

アポイ岳

週末毎に大学院生のフィールドを順番に巡っているうちに、すっかり夏も後半となり、暦の上では立秋となってしまいました。現在、当研究室の大学院生が進めている研究の調査地は、海岸(2名)、湿原河川(3名)、山(2名)、モデル(2名)となっており、必然的に山に行く機会は限られてしまいます。コロナウィルスの蔓延で2年間中止していたスイス実習を今月末に再開することになり、月末から引率教員の1人としてスイス・アルプスに出かけることになりました。湿原や川などの調査ばかりで、すっかり鈍ってしまった足腰でアルプスに出かけると、参加する大学院生に申し訳ないので、この週末はトレーニングと趣味を兼ねて、日高山脈の最南端にあるアポイ岳に出かけました。標高810.5mの低山ですが、幌満かんらん岩体でできた特殊な山で、マグネシウムやニッケルに富み、カルシウムやリンが欠乏するという岩質が作り出す土壌によって、特異な植生が見られることで有名です。

札幌から登山の起点となる様似まではなかなか遠く、4時半に札幌を出て、様似にある登山口に到着したのは8時でした。さっそく登山の準備を始め、登山口にある入山記録簿に名前を書いて出発します。キタゴヨウとアカエゾマツの針葉樹林の中のゆるやかな道を辿っていくと、1合目、2合目という里程と共に、たくさんの案内板が登場します。この山は、ジオパークにも登録されているので、案内板を読みながらいろいろ勉強させてもらいます。不思議なのは、北海道のどこにでもある笹がこの森林の林床にもありますが、背丈が低く、膝くらいの高さまでしかありません。これも超塩基性岩の影響なのか、それとも冬の雪が少ないためでしょうか。

5合目にある避難小屋までは休憩なしでゆっくり登り、ここからは森林限界を抜けた素晴らしい景色を堪能しながらの登山となります。足元には、ハイマツと高山植物の花が目を楽しませてくれます。また、眼下に見える太平洋と海岸線も、なぜか見慣れぬ感じで面白いと思いました。登山道は傾斜を増し、かんらん岩の表面が風化したオレンジ色の岩石が剥き出しになった登山道をゆっくりと進みます。途中、かんらん岩からはんれい岩に移行する場所もあり、地質による風化に対する耐性が地形を決めている現場も見ることができました。

これまで登ってきた周囲に開けたハイマツ帯から、突然ダケカンバに覆われた見晴らしの悪い場所に変わると、そこが山頂でした。山のてっぺんは風が強く、ここだけダケカンバが生えているのは不思議です。山頂でゆっくりお弁当を食べようと思ったのですが、コバエのような虫が柱を作って飛んでおり、写真をそそくさと撮って下山しました。同じ道を帰っても面白くないので、帰りは、旧幌満お花畑経由の下山です。

登山口に戻ったのが、12時ちょっと前。せっかくなので、ジオパークのビジターセンターで展示を見せてもらいました。なかなか立派な展示で、幌満かんらん岩体の成り立ちや超塩基性植生のことを勉強することができました。この後、ビジターセンターの近くにあるアポイ山荘で汗を流し、帰路につきました。

アポイ岳

ベルモントフォーラムプロジェクト “Abandonment and rebound: Societal views on landscape- and land-use change and their impacts on water and soils (ABRESO) (PI: Tim White)”の枠組みでアメリカのニューハンプシャー大学から、大学院生のEric Parkerさんが来日しました。彼の地にあるLamprey川流域の物質循環を調べているEricさんのミッションは、同サイズの流域面積、同様な土地被覆・土地利用をもつ道東の別寒辺牛川で観測を行い、両流域を比較することです。どちらも人口減少を抱える地域で、開発とはベクトルの向きが反対の人為的影響が流域の水・物質循環に与える影響を考えるのが、冒頭に記したABRESOプロジェクトのテーマです。

3週間の滞在の最初になる7月28-30日は、北大 北方生物圏フィールド科学センターの柴田英昭教授と二人で、我々の観測点や採水地点を案内させていただきました。帰国までの3週間、環オホーツク観測研究センターのメンバーもサポートを兼ねて一緒に調査を行い、日米の共同研究を成功させたいと思います。

毎度のことながら、別寒辺牛川の調査に際しては、厚岸臨海実験所の皆様にお世話になりました。記してお礼申し上げます。

別寒辺牛川

本研究室は観測を中心とした研究方法を得意としていますが、現在所属する大学院生の2名はモデル構築に取り組んでいます。その1人、修士1年生の梅津晴希さんは、サロベツ湿原の水・熱収支モデルの構築を修士論文研究のテーマとしています。よりよいモデルを構築すべく、7月23-25日の三日間、サロベツ湿原の現地視察に出かけました。23日は、サロベツ湿原の熱収支モデル構築に取り組んできた北海道大学 北方生物圏フィールド科学センターの高木健太郎教授を訪ね、3時間あまりにわたって湿原の熱収支モデルについてご教示を賜りました。24日は、上サロベツと下サロベツで過去に水・熱収支の観測が行われた実験地を訪ね、植生や地下水の状況などの観察を行いました。この地では、過去にさまざまな先行研究が行われていますが、それらの論文の記述に比べると、当時高層湿原だったところには、さまざまな植物が侵入し、ミズゴケからなる高層湿原の特徴を徐々に失っているような印象を受けました。

今回の調査は天気に恵まれず、終始曇天続きだったため、楽しみにしていた湿原の背後に聳える利尻岳の勇姿を拝むことは叶いませんでした。湿原に秋が訪れたら、再び再訪したいという思いと共に、この大地を後にしました。

サロベツ原野

写真:下サロベツの幌延ビジターセンターの展望台から見たサロベツ原野。過去にさまざまな土地利用変化を被ってきたサロベツ湿原では、牧草地、湿原、乾燥化して笹が侵入した湿原などのモザイクがみられます

S. Fukumoto, S. Sugiyama, S. Hata, J. Saito, T. Shiraiwa and H. Mitsudera (2022) Glacier mass change on the Kamchatka Peninsula, Russia, from 2000 to 2016, Journal of Glaciology, pp. 1 – 14
DOI: https://doi.org/10.1017/jog.2022.50