Archive for the ‘education’ Category

昨年から観測を行っている道北の湿原を訪ねました。この時期、湿原に隣接する道路は閉鎖されているため、アクセスは徒歩かスノーモービルとなります。観測に必要な機材を徒歩で運ぶことは難しく、今回は地元の方にお願いしてスノーモービルを使用しました。到着した湿原はおおよそ1mの積雪に覆われていましたが、幸い、我々が設置した4本の井戸は頭を10cmほど積雪から出しており、すぐに位置を確認することができました。さっそく井戸から地下水を採取しました。地温計を掘り出してみると、残念ながら8本のセンサーのうち、5本のセンサーケーブルが切断していました。記録を見ると、2月中旬に切断が生じたようです。おそらくは2月中旬の暖気によって急速に融雪が進み、その際、データロガーを保管しているクーラーボックスが転倒し、これによってケーブルに大きな力がかかって破断したものと思われます。幸い、昨秋からの連続データは保管されていましたので、冬季の湿原内部の温度分布を観測することに成功しました。今は、できるだけ早く観測地を再訪し、地温計の再設置を行うべく準備を進めているところです。

道北湿原

北海道の山岳研究 -日本国内の極域環境変化-

近年地球温暖化、気候変動という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。永久凍土の融解や氷河の後退など、世界では色々な例が報告されています。それでは実際に日本ではどのようなことが生じているのでしょうか。山岳地域は環境変化が現れやすいと考えられている地域のひとつです。そこで日本最北の地にある北海道の山岳地域を対象にした一般向けの研究発表会を企画しました。動植物をはじめとする広い分野の研究成果を聞くことが出来ます。

日時:2024年3月2日 9:20-17:40
場所:北海道大学低温科学研究所 講堂(札幌市北区北19条西8丁目)
主催:岩花 剛(北海道大学・アラスカ大)・白岩孝行(北海道大学)・曽根敏雄(氷河・雪氷圏環境研究舎)
後援:日本雪氷学会北海道支部、北海道地理学会、北海道大学北極域研究センター、(NPO)氷河・雪氷圏環境研究舎
参加登録:https://alaska.zoom.us/meeting/register/tZYqdemrrjMvGNZ-vGy1piwdrXqWRaHpLbue
参加無料ですが、参加には事前登録が必要です。
第二部招待講演(13:15-)については、WEB配信を行います。
連絡先:giwahana@alaska.edu 岩花 剛(北大・アラスカ大)

北海道の山岳研究

今年も北海道大学大学院 環境科学院 地球圏科学専攻 雪氷・寒冷圏コースが実施する雪氷実習IIの引率で、1月23日から26日にかけて北海道北部にある雨龍研究林に8名の大学院生と共に出かけてきました。タイミングが悪く、実習期間中は低気圧の通過と強い冬型の気圧配置によって、北海道全域で吹雪が吹き荒れましたが、幸い、実習を行った母子里付近は実習期間中穏やかな天気でした。盆地特有の放射冷却の観測、積雪断面観察、森林内の植生観察、広域積雪観測という4つのプログラムが実施され、大学院生は観測・観察の方法とデータの取りまとめを学習しました。最終日は、それぞれのグループが成果を発表し、今年も無事に雪氷実習を終えることができました。
 実習の実施にあたっては、北海道大学 北方圏フィールド科学センター雨龍研究林にたいへんお世話になりました。

母子里

今年も、北海道大学大学院 環境科学院の国際南極大学カリキュラムのひとつに位置付けられているスイス氷河実習に引率教員として参加させていただきました。
 杉山慎教授をリーダーに、私と大学院生7名の総勢9名が8月26日から9月9日にかけて、)スイス連邦工科大学における氷河に関する講義受講; 2)ベルナーオーバーラントでの下グリンデルワルド氷河とアレッチ氷河の観察、ならびにユングフラウヨッホ高地観測所訪問; 3)ローヌ氷河における氷河・気象・水文観測実習; 4)ゴルナーグラートからのポリサーマル氷河の観察; 5)観測結果の報告ならびにスイス連邦工科大学における氷河と気候に関する講義受講、という5つのプログラムをこなしました。
 到着時はチューリッヒで豪雨、山では新雪という悪天に遭遇しましたが、その後は好天に恵まれ、新雪に覆われた白銀のアルプスを満喫できました。大学院生も、スイスの氷河、山、スイス連邦工科大学でのキャンパスライフなどを満喫できたと思います。2022年に引き続き、2023年も小雪と酷暑により、氷河は後退を続けています。

ヘルンリ尾根

今年度から環境科学院環境起学専攻の修士1年生としてセンターの活動に参加して修士研究を開始した雫田さんの最初の野外観測として、道東の別寒辺牛川流域を訪ねました。過疎化が進む中山間地の活性化に興味を持っている雫田さんが模索するテーマは、河川における懸濁物質の挙動です。今回は最初の調査ということもあり、マルチ水質計(YSI Pro DSS)を使用して、流域の広範囲にわたって降雨後の濁度、pH、溶存酸素濃度、電気伝導度、水温等の測定を実施し、湿原河川の懸濁物質研究の焦点を絞るための基礎データを収集しました。天気に恵まれ、参加者は初夏の湿原を満喫できました。観測にあたっては、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所(所長 仲岡雅裕教授)と厚岸水鳥観察館にお世話になりました。記して感謝申し上げます。

別寒辺牛川

6月13日から20日にかけて、大学院生の西川穂波、伊原希望、小林工真、坂口大晴の各氏と共に、知床半島先端部の漂着物調査を実施しました。知床岬は、ルシャ地区と並んで漂着物の多い地域と過去の研究で報告されています。オホーツク総合振興局から港湾使用の許可を得て、半島先端部にある文吉湾に上陸し、半島のオホーツク海側の海岸を広域にわたってドローンで写真測量すると共に、啓吉湾の海岸で漂着物を計量しました。調査にご協力いただきましたNPO法人知床自然学校、知床財団ならびに晃洋丸の菊池船長に感謝申し上げます。

羊蹄山気温ポール

当研究室からは、博士が1名、修士が2名巣立ちました。博士(環境科学)の学位を得た史穆清さんは低温科学研究所のPD研究員、修士(環境科学)の学位を得た竹内祥太さんと飯田幹太さんは、それぞれ国土地理院と林野庁で4月から新しい道を進みます。新天地での更なる活躍を祈ります。皆さん、卒業おめでとう!

R4修了式

東京書籍が発行する高校社会の教育情報誌 ニューサポート高校「社会」vol.39(2023年春号)に、「安定地域の大地形」というコラムを書かせていただきました。

今年に入ってから2回目の海岸漂着ごみ調査を知床で行いました。秋晴れに恵まれ、大学院生の西川穂波さんと伊原希望さんと一緒に秋の知床の海岸を歩き、二日間の現地調査によって予定していた調査内容を全て実施することができました。ご協力いただきました知床財団には感謝申し上げます。

今回の調査の目的は、ルシャ海岸に堆積した漂着ごみの堆積・流出による変化をドローンによるSfM多視点ステレオ写真測量によって解析するため、ポンベツ川の左岸と右岸に広がる約2kmの長さの海岸の空中写真測量を実施することでした。また、3ケ所に設置したタイムラプスカメラのデータ回収と越冬観測のためのメンテナンスを行いました。そして、今年の6月に試験的に漂着ごみを撤去した区画において、夏季にどれだけの漂着ごみが堆積したかを計量しました。

調査・観測の結果は、来春に行われる日本地理学会において公表予定です。

なお、本研究の実施にあたっては、環境研究総合推進費による課題「世界自然遺産・知床をはじめとするオホーツク海南部海域の海氷・海洋変動予測と海洋生態系への気候変動リスク評価(代表 三寺史夫)」を使用させていただきました。

知床海岸20221021

 8月27日から9月10日にかけての2週間、スイスにおいて大学院生を対象とした氷河実習を行いました。この実習は、北海道大学大学院 環境科学院の国際南極大学カリキュラムのひとつに位置付けられたものです。過去の活動はこちらでご覧ください。
 コロナ禍で2020年と2021年の開催が中止となっていたため、2019年に実施して以来、3年ぶりの実施となりました。杉山慎教授をリーダーとして、私と大学院生6名に加え、スイス連邦工科大学に留学中の日本人大学院生が1名加わり、合計9名での実習となりました。
 実習は5つのプログラムから構成されています。1)スイス連邦工科大学において氷河に関する講義を受講; 2)ベルナーオーバーラントで下グリンデルワルド氷河とアレッチ氷河の観察、ならびにユングフラウヨッホ高地観測所訪問; 3)ローヌ氷河における氷河・気象・水文観測実習; 4)ゴルナーグラートからのポリサーマル氷河の観察; 5)観測結果の報告ならびにスイス連邦工科大学における氷河と気候に関する講義受講。
 例年にも増して良い天気に恵まれ、参加者はスイスの氷河、山、生活を満喫できたと思います。2022年は小雪と例年にない酷暑により、氷河は更に後退したもようです。温暖化は、スイスの氷河や永久凍土の分布に大きく影響しているようです。

アポイ岳