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今年も北海道大学大学院 環境科学院 地球圏科学専攻 雪氷・寒冷圏コースが実施する雪氷実習IIの引率で、1月23日から26日にかけて北海道北部にある雨龍研究林に8名の大学院生と共に出かけてきました。タイミングが悪く、実習期間中は低気圧の通過と強い冬型の気圧配置によって、北海道全域で吹雪が吹き荒れましたが、幸い、実習を行った母子里付近は実習期間中穏やかな天気でした。盆地特有の放射冷却の観測、積雪断面観察、森林内の植生観察、広域積雪観測という4つのプログラムが実施され、大学院生は観測・観察の方法とデータの取りまとめを学習しました。最終日は、それぞれのグループが成果を発表し、今年も無事に雪氷実習を終えることができました。
 実習の実施にあたっては、北海道大学 北方圏フィールド科学センター雨龍研究林にたいへんお世話になりました。

母子里

環境省・(独)環境再生保全機構からの委託による環境研究総合推進費「世界自然遺産・知床をはじめとするオホーツク海南部海域の海氷・海洋変動予測と海洋生態系への気候変動リスク評価」の成果に基づく公開シンポジウムを開催します。
開催日:2024年3月14日(木)13:00-17:00
開催場所:北海道大学 低温科学研究所 3階講堂(オンライン配信あり)
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13:00-13:30「知床から流氷は消えるのか!?」 三寺史夫(北海道大学)
13:30-14:00「オホーツク海における海氷の年々変動を引き起こすメカニズム」 植田宏昭(筑波大学)
14:00-14:30「知床の海をモニターする」中村知裕(北海道大学)
14:30-15:00「流氷が豊かな生物生産を生み出す仕組み」 西岡 純(北海道大学)
15:00-15:30「海氷勢力の変化に対する生物の応答」  山村織生(北海道大学)
15:45-17:00 パネルディスカッション  白岩孝行(北海道大学)
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申込方法|こちらのURLからお申し込みください
申込締切|2024年3月8日(金)まで 
会場 60名 Zoom 200名 定員になり次第締め切り
問合せ先|shiretoko2024@gmail.com
主催|北海道大学 低温科学研究所
共催|公益財団法人 知床財団

知床シンポ

アムール川がオホーツク海に輸送する溶存鉄の供給源として、永久凍土をもつ湿地が重要であり、気候変動によって永久凍土が変化することによって河川に流出する鉄も変化する可能性があることを現地での観測から見出し、論文として出版しました。

Tashiro, Y., Yoh, M., Shesterkin, V.P., Shiraiwa, T., Onishi, T. and Naito, D. (2023) Permafrost wetlands are sources of dissolved iron and dissolved organic carbon to the Amur-mid rivers in summer. Journal of Geophysical Research: Biogeosciences, 128, e2023JG007481. https://doi.org/10.1029/2023JG007481

どう変化するかを更に突き止めようと、新たな調査計画を練っている時に、コロナ禍が始まり、更にはロシアのウクライナ侵攻が起きました。当面、ロシアでの現地調査は無理と判断し、代替地として季節凍土が発達する北海道の湿地に目をつけ、民間企業の保有する道北の湿地を実験地として使わせていただけることになり、この一週間、岐阜大学と名古屋大学の研究者と共に湿原を掘削し、4本の井戸を設置しました。これから数年にわたり、これらの井戸の地下水と河川水を定期的に採取して、積雪や凍結が溶存鉄流出に及ぼす影響を調べます。

丸山湿原

今年も、北海道大学大学院 環境科学院の国際南極大学カリキュラムのひとつに位置付けられているスイス氷河実習に引率教員として参加させていただきました。
 杉山慎教授をリーダーに、私と大学院生7名の総勢9名が8月26日から9月9日にかけて、)スイス連邦工科大学における氷河に関する講義受講; 2)ベルナーオーバーラントでの下グリンデルワルド氷河とアレッチ氷河の観察、ならびにユングフラウヨッホ高地観測所訪問; 3)ローヌ氷河における氷河・気象・水文観測実習; 4)ゴルナーグラートからのポリサーマル氷河の観察; 5)観測結果の報告ならびにスイス連邦工科大学における氷河と気候に関する講義受講、という5つのプログラムをこなしました。
 到着時はチューリッヒで豪雨、山では新雪という悪天に遭遇しましたが、その後は好天に恵まれ、新雪に覆われた白銀のアルプスを満喫できました。大学院生も、スイスの氷河、山、スイス連邦工科大学でのキャンパスライフなどを満喫できたと思います。2022年に引き続き、2023年も小雪と酷暑により、氷河は後退を続けています。

ヘルンリ尾根

今年度から環境科学院環境起学専攻の修士1年生としてセンターの活動に参加して修士研究を開始した雫田さんの最初の野外観測として、道東の別寒辺牛川流域を訪ねました。過疎化が進む中山間地の活性化に興味を持っている雫田さんが模索するテーマは、河川における懸濁物質の挙動です。今回は最初の調査ということもあり、マルチ水質計(YSI Pro DSS)を使用して、流域の広範囲にわたって降雨後の濁度、pH、溶存酸素濃度、電気伝導度、水温等の測定を実施し、湿原河川の懸濁物質研究の焦点を絞るための基礎データを収集しました。天気に恵まれ、参加者は初夏の湿原を満喫できました。観測にあたっては、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所(所長 仲岡雅裕教授)と厚岸水鳥観察館にお世話になりました。記して感謝申し上げます。

別寒辺牛川

6月13日から20日にかけて、大学院生の西川穂波、伊原希望、小林工真、坂口大晴の各氏と共に、知床半島先端部の漂着物調査を実施しました。知床岬は、ルシャ地区と並んで漂着物の多い地域と過去の研究で報告されています。オホーツク総合振興局から港湾使用の許可を得て、半島先端部にある文吉湾に上陸し、半島のオホーツク海側の海岸を広域にわたってドローンで写真測量すると共に、啓吉湾の海岸で漂着物を計量しました。調査にご協力いただきましたNPO法人知床自然学校、知床財団ならびに晃洋丸の菊池船長に感謝申し上げます。

羊蹄山気温ポール

2021年秋から継続している永久凍土探査を目的とした羊蹄山山頂部における気温・地温観測を継続すべく、冬の間にダメージを受けた計測器のメンテナンスとデータ回収を目的に羊蹄山に登りました。例年より早いペースで雪融けが進んだようで、倶知安から山頂に至る登山道は7合目まではすでに雪がなく、7合目から9合目にかけての区間だけが雪面の登高でした。山頂部の気温タワーは予想通り、冬期の着雪によって倒壊していたため、新しいポールとシェルターで補修し、観測を継続しています。悪化する天候に伴う烈風の山頂での作業は厳しいものでしたが、山頂での気温・地温観測を継続すべく、今後も定期的にメンテナンスを行っていきます。

羊蹄山気温ポール

当研究室からは、博士が1名、修士が2名巣立ちました。博士(環境科学)の学位を得た史穆清さんは低温科学研究所のPD研究員、修士(環境科学)の学位を得た竹内祥太さんと飯田幹太さんは、それぞれ国土地理院と林野庁で4月から新しい道を進みます。新天地での更なる活躍を祈ります。皆さん、卒業おめでとう!

R4修了式

今年に入ってから2回目の海岸漂着ごみ調査を知床で行いました。秋晴れに恵まれ、大学院生の西川穂波さんと伊原希望さんと一緒に秋の知床の海岸を歩き、二日間の現地調査によって予定していた調査内容を全て実施することができました。ご協力いただきました知床財団には感謝申し上げます。

今回の調査の目的は、ルシャ海岸に堆積した漂着ごみの堆積・流出による変化をドローンによるSfM多視点ステレオ写真測量によって解析するため、ポンベツ川の左岸と右岸に広がる約2kmの長さの海岸の空中写真測量を実施することでした。また、3ケ所に設置したタイムラプスカメラのデータ回収と越冬観測のためのメンテナンスを行いました。そして、今年の6月に試験的に漂着ごみを撤去した区画において、夏季にどれだけの漂着ごみが堆積したかを計量しました。

調査・観測の結果は、来春に行われる日本地理学会において公表予定です。

なお、本研究の実施にあたっては、環境研究総合推進費による課題「世界自然遺産・知床をはじめとするオホーツク海南部海域の海氷・海洋変動予測と海洋生態系への気候変動リスク評価(代表 三寺史夫)」を使用させていただきました。

知床海岸20221021

 8月27日から9月10日にかけての2週間、スイスにおいて大学院生を対象とした氷河実習を行いました。この実習は、北海道大学大学院 環境科学院の国際南極大学カリキュラムのひとつに位置付けられたものです。過去の活動はこちらでご覧ください。
 コロナ禍で2020年と2021年の開催が中止となっていたため、2019年に実施して以来、3年ぶりの実施となりました。杉山慎教授をリーダーとして、私と大学院生6名に加え、スイス連邦工科大学に留学中の日本人大学院生が1名加わり、合計9名での実習となりました。
 実習は5つのプログラムから構成されています。1)スイス連邦工科大学において氷河に関する講義を受講; 2)ベルナーオーバーラントで下グリンデルワルド氷河とアレッチ氷河の観察、ならびにユングフラウヨッホ高地観測所訪問; 3)ローヌ氷河における氷河・気象・水文観測実習; 4)ゴルナーグラートからのポリサーマル氷河の観察; 5)観測結果の報告ならびにスイス連邦工科大学における氷河と気候に関する講義受講。
 例年にも増して良い天気に恵まれ、参加者はスイスの氷河、山、生活を満喫できたと思います。2022年は小雪と例年にない酷暑により、氷河は更に後退したもようです。温暖化は、スイスの氷河や永久凍土の分布に大きく影響しているようです。

アポイ岳