S. Fukumoto, S. Sugiyama, S. Hata, J. Saito, T. Shiraiwa and H. Mitsudera (2022) Glacier mass change on the Kamchatka Peninsula, Russia, from 2000 to 2016, Journal of Glaciology, pp. 1 – 14
DOI: https://doi.org/10.1017/jog.2022.50
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月齢によって異なる潮汐の変化が湿原河川の感潮域の河川流出・流入量に与える影響を1年間にわたって北海道東部の厚岸湖に流入する別寒辺牛(べかんべうし)川で追いかけています。昨年の10月初旬、今年の3月下旬に続き、今回は3回目の観測となります。河口からおおよそ1.4km遡ったRB3地点に側線を設け、この側線を通過する河川流量を係留型のADCP (Sontek IQ-plus)と移動型のADCP (Sontek M9)で観測します。今回は、中潮〜小潮〜大潮〜中潮へと至る一連の月齢における連続データを取得すべく、研究室の2人の大学院生(丁・竹内)が観測にあたります。加えて、厚岸湾、厚岸湖、RB2地点(カヌー中間駅)、RB3地点(カヌー出発点)の水位データも連続で観測し、潮汐変化が別寒辺牛川の水位と流量に及ぼす影響を地点ごとに明らかにしたいと思っています。このテーマは大学院生の丁曼卉さんの博士研究のテーマです。
一方、大学院生の竹内祥太さんは、別寒辺牛川から厚岸湖・厚岸湾に流出する有色溶存有機物(CDOM)の起源とその濃度・フラックスの空間的・時間的変化の解明に取り組んでいます。BB3とRB1地点にCDOM濃度、クロロフィルa濃度、濁度を計測するセンサーを設置し、時間と共に変化するCDOM濃度の観測を行います。また、流域の各地点で、河川水を採水し、そのCDOM濃度を分析する計画もあります。加えて、湿原の土壌水を吸引し、地下のCDOM濃度の測定も実施します。2週間の長期観測となりますが、2人の研究が順調に進むことを願っています。
今回の観測でも、これまで同様、北海道大学フィールド科学センター厚岸臨海実験所、厚岸水鳥観察館の2機関には大変お世話になりました。北海道大学北方圏フィールド科学センターの柴田英昭教授には、現地調査にご協力いただきました。国立環境研究所の中田聡史博士には、CDOM、クロロフィルa, 濁度測定のための計器をお借りしました。ザイレムジャパンの中田正人氏にはADCP (Sontek M9)のレンタルと運用でお世話になりました。本研究は、北海道大学 低温科学研究所 開拓型共同研究「陸海結合システム:沿岸域の生物生産特性を制御する栄養物質のストイキオメトリー(代表 長尾誠也 金沢大学)、およびベルモントフォーラム ABRESOプロジェクト(代表 T. White, ペンシルバニア州立大学)の一環として実施されました。上記の機関と個人に記してお礼申し上げます。
2018年11月に開始した知床世界自然遺産のオホーツク海側の海岸漂着ごみ調査を今年も再開しました。この調査・研究は、知床財団との共同研究です。今回は、このテーマで博士論文の研究を進めている西川と、あたらしく修士課程に入学した伊原と私の3名での調査です。6月5日の出発当日は車のエンジントラブルで札幌に引き返すというハプニングがありましたが、車を換えて6月6日に再び知床に向かいました。6月7日は、我々の調査地でヒグマの生態捕獲調査があるということで、安全のため、羅臼側の海岸の調査を実施しました。知床岬にもっとも近い相泊の海岸から標津に至る海岸の目視観測です。6月8日はウトロ側の調査地であるルシャ湾に向かい、設置していたタイムラプスカメラのデータ回収と再設置、写真測量のためのGCPの設置と測位、Phamtom 4RTKを用いたSfM-MVS写真測量、そしてMatrice 300RTKに搭載したサーマルイメージャーによる熱赤外画像の撮影を実施しました。6月9日は、より広範囲の海岸を対象に同様な作業を繰り返し、6月10日は漂着ごみの計量調査を実施して、ほぼ予定していた作業を終えることができました。これらの現地調査と並行し、知床のウトロで漂着ごみ問題に取り組む何名かの方々とミーティングを行い、研究成果と実際のごみ問題の解決をつなげる方策について意見交換を行いました。
調査地では、昨年の晩秋から今冬にかけて、 高い波浪が生じたようで、2018年11月にこの調査を開始して以降、最大の地形と漂着ごみの変化が起こっていました。今後は得られたデータの解析を進め、漂着ごみの質量収支変化を明らかにします。次回は9月中旬以降の調査を予定しています。
なお、本研究の実施にあたっては、環境研究総合推進費による課題「世界自然遺産・知床をはじめとするオホーツク海南部海域の海氷・海洋変動予測と海洋生態系への気候変動リスク評価(代表 三寺史夫)」を使用させていただきました。
東京書籍が発行する高校社会の教育情報誌 ニューサポート高校「社会」vol.37(2022年春号)に、「大地形と資源:石油はどこでとれるのか?」というコラムを書かせていただきました。
例年は北海道でもっとも寒い母子里(もしり)に行き、泊まりがけで行う雪氷実習IIですが、昨年に続き、今年も札幌で開催することになりました。2週間の期間にわたり、北大キャンパスや札幌近郊の手稲山を舞台に、積雪断面観測、広域積雪観測、積雪・土壌熱輸送観測、気象観測を体験します。今年参加した大学院生は12名。札幌だけでなく、函館や名寄からの参加者もおりました。
私が主に担当したのは、積雪・土壌内での熱輸送の観測です。12月中旬に北大キャンパスの農場に設置した合計8深度の地温計・雪温計のデータから、鉛直一次元の熱輸送を計算し、積雪下面における熱収支を求めるという課題でした。
年末からの積雪により、今年は雪に悩まされる札幌の街ですが、雪氷実習にとっては幸いでした。広域積雪調査では、手稲山の麓からスキー場に至る高度別の積雪深・積雪水量観測を実施し、標高でこれらのパラメータがどのように変化するかを学びました。
来年こそ、母子里の実習が復活し、大学院生の皆さんに-20℃の世界を体験してもらいたいと思っています。
今年は6月下旬と10月中旬に知床のオホーツク海沿岸で海岸漂着ごみの調査を実施しました。調査地はすでに積雪のために入域できないため、今回は今年最後の調査として、12月5日〜8日にかけて、当地で海岸漂着ごみに関わる人々に聞き取り調査を実施しました。聞き取り調査の対象は、地方自治体、漁業協同組合、環境省自然保護官、ボランティア、管理団体などの諸機関・関係者です。
海岸漂着ごみは、誰しもが問題と思っていながらも、責任の所在があいまいであることや処理のための予算が必要であることにより、なかなか解決が難しい問題です。ましてや、知床世界自然遺産内は、険しい自然と世界自然遺産の管理体制により、誰でも簡単にアクセスできるわけではないので、回収も一筋縄ではいきません。聞き取り調査により、それぞれの機関や関係者が多くの努力を割いているにもかかわらず、なかなか解決には至っていないことがわかりました。
我々の役割は、自然科学的な方法に基づいて、漂着ごみの経年モニタリングのデータから、漂着ごみの質量収支の時間変化を明らかにすることです。漂着ごみの内容物、体積と重量、堆積・侵食のメカニズムと発生時期が明らかになれば、回収のタイミングや回収の頻度などについて、実際に漂着ごみ問題の解決に取り組む人々に情報を提供できるのではないかと考えています。
皆さんから聞き取った情報を参考にしながら、来年度も調査を継続したいと思っています。なお、本研究は、当研究室の西川穂波の修士研究として実施しました。調査は晴天に恵まれ、冠雪した美しい知床連山を仰ぎながら実施できました。調査にご協力くださった関係諸機関・個人の皆様に心よりお礼申し上げます。
先日、全国の自然地理学を専攻する大学生・大学院生を対象としたオンラインセミナーでアムール川とオホーツク海を対象とする魚付き林の話をさせていただきました。講演終了後、1人の学生さんから勉強に使えそうな教科書を訊ねられましたので、以下、最初に読んだら勉強になりそうな本を列記します。これらの本で概略を知った後に関連論文を読んだら良いと思います。
山下洋監修・京都大学フィールド科学教育研究センター編集(2011)「[改訂増補] 森里海連環学: 森から海までの統合的管理を目指して」京都大学学術出版会
向井宏監修・京都大学フィールド科学教育研究センター編集(2012)「森と海をむすぶ川: 沿岸域再生のために」京都大学学術出版会
松永勝彦著 (2010) 「森が消えれば海も死ぬ―陸と海を結ぶ生態学 第2版」 講談社 ブルーバックス
川那部浩哉監修・水野信彦監修・中村太士編集 (2013) 「河川生態学」 講談社
以上
「全国の自然地理学に興味をもつ学生が一堂に会して、自然地理学の俯瞰的な視点とその意義や魅力を知る」ことを目的にオンラインで運営されている自然地理学セミナーでお話しさせていただける機会をいただきました。12月11日(土) 13:00-14:30です。「陸と海をつなぐ地理学」というタイトルで、魚つき林の話をさせていただく予定です。全国の自然地理学を専攻する学部生・院生の皆さんと交流するのを楽しみにしています。参加希望の皆さんは、指導教員ないしウェブサイトの事務局を通じてお申し込みください。
少し古い資料ですが、三井物産環境基金(2011-2013)にご支援いただき実行したプロジェクトの報告書を公開させていただきます。
アムール・オホーツクコンソーシアム編
「オホーツク海の越境環境保全に向けた認識共同体の構築と実践」
自然科学研究で得られた成果を社会に還元するための一つの試みです。
東京書籍が発行する高校社会の教育情報誌 ニューサポート高校「社会」vol.36(2021年秋号)に、「地理用語としての造山帯の退場」というコラムを書かせていただきました。