Archive for the ‘outreach’ Category
今年も、北海道大学大学院 環境科学院の国際南極大学カリキュラムのひとつに位置付けられているスイス氷河実習に引率教員として参加させていただきました。
杉山慎教授をリーダーに、私と大学院生7名の総勢9名が8月26日から9月9日にかけて、)スイス連邦工科大学における氷河に関する講義受講; 2)ベルナーオーバーラントでの下グリンデルワルド氷河とアレッチ氷河の観察、ならびにユングフラウヨッホ高地観測所訪問; 3)ローヌ氷河における氷河・気象・水文観測実習; 4)ゴルナーグラートからのポリサーマル氷河の観察; 5)観測結果の報告ならびにスイス連邦工科大学における氷河と気候に関する講義受講、という5つのプログラムをこなしました。
到着時はチューリッヒで豪雨、山では新雪という悪天に遭遇しましたが、その後は好天に恵まれ、新雪に覆われた白銀のアルプスを満喫できました。大学院生も、スイスの氷河、山、スイス連邦工科大学でのキャンパスライフなどを満喫できたと思います。2022年に引き続き、2023年も小雪と酷暑により、氷河は後退を続けています。
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東京書籍が発行する高校社会の教育情報誌 ニューサポート高校「社会」vol.39(2023年春号)に、「安定地域の大地形」というコラムを書かせていただきました。
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8月27日から9月10日にかけての2週間、スイスにおいて大学院生を対象とした氷河実習を行いました。この実習は、北海道大学大学院 環境科学院の国際南極大学カリキュラムのひとつに位置付けられたものです。過去の活動はこちらでご覧ください。
コロナ禍で2020年と2021年の開催が中止となっていたため、2019年に実施して以来、3年ぶりの実施となりました。杉山慎教授をリーダーとして、私と大学院生6名に加え、スイス連邦工科大学に留学中の日本人大学院生が1名加わり、合計9名での実習となりました。
実習は5つのプログラムから構成されています。1)スイス連邦工科大学において氷河に関する講義を受講; 2)ベルナーオーバーラントで下グリンデルワルド氷河とアレッチ氷河の観察、ならびにユングフラウヨッホ高地観測所訪問; 3)ローヌ氷河における氷河・気象・水文観測実習; 4)ゴルナーグラートからのポリサーマル氷河の観察; 5)観測結果の報告ならびにスイス連邦工科大学における氷河と気候に関する講義受講。
例年にも増して良い天気に恵まれ、参加者はスイスの氷河、山、生活を満喫できたと思います。2022年は小雪と例年にない酷暑により、氷河は更に後退したもようです。温暖化は、スイスの氷河や永久凍土の分布に大きく影響しているようです。
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週末毎に大学院生のフィールドを順番に巡っているうちに、すっかり夏も後半となり、暦の上では立秋となってしまいました。現在、当研究室の大学院生が進めている研究の調査地は、海岸(2名)、湿原河川(3名)、山(2名)、モデル(2名)となっており、必然的に山に行く機会は限られてしまいます。コロナウィルスの蔓延で2年間中止していたスイス実習を今月末に再開することになり、月末から引率教員の1人としてスイス・アルプスに出かけることになりました。湿原や川などの調査ばかりで、すっかり鈍ってしまった足腰でアルプスに出かけると、参加する大学院生に申し訳ないので、この週末はトレーニングと趣味を兼ねて、日高山脈の最南端にあるアポイ岳に出かけました。標高810.5mの低山ですが、幌満かんらん岩体でできた特殊な山で、マグネシウムやニッケルに富み、カルシウムやリンが欠乏するという岩質が作り出す土壌によって、特異な植生が見られることで有名です。
札幌から登山の起点となる様似まではなかなか遠く、4時半に札幌を出て、様似にある登山口に到着したのは8時でした。さっそく登山の準備を始め、登山口にある入山記録簿に名前を書いて出発します。キタゴヨウとアカエゾマツの針葉樹林の中のゆるやかな道を辿っていくと、1合目、2合目という里程と共に、たくさんの案内板が登場します。この山は、ジオパークにも登録されているので、案内板を読みながらいろいろ勉強させてもらいます。不思議なのは、北海道のどこにでもある笹がこの森林の林床にもありますが、背丈が低く、膝くらいの高さまでしかありません。これも超塩基性岩の影響なのか、それとも冬の雪が少ないためでしょうか。
5合目にある避難小屋までは休憩なしでゆっくり登り、ここからは森林限界を抜けた素晴らしい景色を堪能しながらの登山となります。足元には、ハイマツと高山植物の花が目を楽しませてくれます。また、眼下に見える太平洋と海岸線も、なぜか見慣れぬ感じで面白いと思いました。登山道は傾斜を増し、かんらん岩の表面が風化したオレンジ色の岩石が剥き出しになった登山道をゆっくりと進みます。途中、かんらん岩からはんれい岩に移行する場所もあり、地質による風化に対する耐性が地形を決めている現場も見ることができました。
これまで登ってきた周囲に開けたハイマツ帯から、突然ダケカンバに覆われた見晴らしの悪い場所に変わると、そこが山頂でした。山のてっぺんは風が強く、ここだけダケカンバが生えているのは不思議です。山頂でゆっくりお弁当を食べようと思ったのですが、コバエのような虫が柱を作って飛んでおり、写真をそそくさと撮って下山しました。同じ道を帰っても面白くないので、帰りは、旧幌満お花畑経由の下山です。
登山口に戻ったのが、12時ちょっと前。せっかくなので、ジオパークのビジターセンターで展示を見せてもらいました。なかなか立派な展示で、幌満かんらん岩体の成り立ちや超塩基性植生のことを勉強することができました。この後、ビジターセンターの近くにあるアポイ山荘で汗を流し、帰路につきました。
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ベルモントフォーラムプロジェクト “Abandonment and rebound: Societal views on landscape- and land-use change and their impacts on water and soils (ABRESO) (PI: Tim White)”の枠組みでアメリカのニューハンプシャー大学から、大学院生のEric Parkerさんが来日しました。彼の地にあるLamprey川流域の物質循環を調べているEricさんのミッションは、同サイズの流域面積、同様な土地被覆・土地利用をもつ道東の別寒辺牛川で観測を行い、両流域を比較することです。どちらも人口減少を抱える地域で、開発とはベクトルの向きが反対の人為的影響が流域の水・物質循環に与える影響を考えるのが、冒頭に記したABRESOプロジェクトのテーマです。
3週間の滞在の最初になる7月28-30日は、北大 北方生物圏フィールド科学センターの柴田英昭教授と二人で、我々の観測点や採水地点を案内させていただきました。帰国までの3週間、環オホーツク観測研究センターのメンバーもサポートを兼ねて一緒に調査を行い、日米の共同研究を成功させたいと思います。
毎度のことながら、別寒辺牛川の調査に際しては、厚岸臨海実験所の皆様にお世話になりました。記してお礼申し上げます。
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本研究室は観測を中心とした研究方法を得意としていますが、現在所属する大学院生の2名はモデル構築に取り組んでいます。その1人、修士1年生の梅津晴希さんは、サロベツ湿原の水・熱収支モデルの構築を修士論文研究のテーマとしています。よりよいモデルを構築すべく、7月23-25日の三日間、サロベツ湿原の現地視察に出かけました。23日は、サロベツ湿原の熱収支モデル構築に取り組んできた北海道大学 北方生物圏フィールド科学センターの高木健太郎教授を訪ね、3時間あまりにわたって湿原の熱収支モデルについてご教示を賜りました。24日は、上サロベツと下サロベツで過去に水・熱収支の観測が行われた実験地を訪ね、植生や地下水の状況などの観察を行いました。この地では、過去にさまざまな先行研究が行われていますが、それらの論文の記述に比べると、当時高層湿原だったところには、さまざまな植物が侵入し、ミズゴケからなる高層湿原の特徴を徐々に失っているような印象を受けました。
今回の調査は天気に恵まれず、終始曇天続きだったため、楽しみにしていた湿原の背後に聳える利尻岳の勇姿を拝むことは叶いませんでした。湿原に秋が訪れたら、再び再訪したいという思いと共に、この大地を後にしました。

写真:下サロベツの幌延ビジターセンターの展望台から見たサロベツ原野。過去にさまざまな土地利用変化を被ってきたサロベツ湿原では、牧草地、湿原、乾燥化して笹が侵入した湿原などのモザイクがみられます
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S. Fukumoto, S. Sugiyama, S. Hata, J. Saito, T. Shiraiwa and H. Mitsudera (2022) Glacier mass change on the Kamchatka Peninsula, Russia, from 2000 to 2016, Journal of Glaciology, pp. 1 – 14
DOI: https://doi.org/10.1017/jog.2022.50
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月齢によって異なる潮汐の変化が湿原河川の感潮域の河川流出・流入量に与える影響を1年間にわたって北海道東部の厚岸湖に流入する別寒辺牛(べかんべうし)川で追いかけています。昨年の10月初旬、今年の3月下旬に続き、今回は3回目の観測となります。河口からおおよそ1.4km遡ったRB3地点に側線を設け、この側線を通過する河川流量を係留型のADCP (Sontek IQ-plus)と移動型のADCP (Sontek M9)で観測します。今回は、中潮〜小潮〜大潮〜中潮へと至る一連の月齢における連続データを取得すべく、研究室の2人の大学院生(丁・竹内)が観測にあたります。加えて、厚岸湾、厚岸湖、RB2地点(カヌー中間駅)、RB3地点(カヌー出発点)の水位データも連続で観測し、潮汐変化が別寒辺牛川の水位と流量に及ぼす影響を地点ごとに明らかにしたいと思っています。このテーマは大学院生の丁曼卉さんの博士研究のテーマです。
一方、大学院生の竹内祥太さんは、別寒辺牛川から厚岸湖・厚岸湾に流出する有色溶存有機物(CDOM)の起源とその濃度・フラックスの空間的・時間的変化の解明に取り組んでいます。BB3とRB1地点にCDOM濃度、クロロフィルa濃度、濁度を計測するセンサーを設置し、時間と共に変化するCDOM濃度の観測を行います。また、流域の各地点で、河川水を採水し、そのCDOM濃度を分析する計画もあります。加えて、湿原の土壌水を吸引し、地下のCDOM濃度の測定も実施します。2週間の長期観測となりますが、2人の研究が順調に進むことを願っています。
今回の観測でも、これまで同様、北海道大学フィールド科学センター厚岸臨海実験所、厚岸水鳥観察館の2機関には大変お世話になりました。北海道大学北方圏フィールド科学センターの柴田英昭教授には、現地調査にご協力いただきました。国立環境研究所の中田聡史博士には、CDOM、クロロフィルa, 濁度測定のための計器をお借りしました。ザイレムジャパンの中田正人氏にはADCP (Sontek M9)のレンタルと運用でお世話になりました。本研究は、北海道大学 低温科学研究所 開拓型共同研究「陸海結合システム:沿岸域の生物生産特性を制御する栄養物質のストイキオメトリー(代表 長尾誠也 金沢大学)、およびベルモントフォーラム ABRESOプロジェクト(代表 T. White, ペンシルバニア州立大学)の一環として実施されました。上記の機関と個人に記してお礼申し上げます。
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2018年11月に開始した知床世界自然遺産のオホーツク海側の海岸漂着ごみ調査を今年も再開しました。この調査・研究は、知床財団との共同研究です。今回は、このテーマで博士論文の研究を進めている西川と、あたらしく修士課程に入学した伊原と私の3名での調査です。6月5日の出発当日は車のエンジントラブルで札幌に引き返すというハプニングがありましたが、車を換えて6月6日に再び知床に向かいました。6月7日は、我々の調査地でヒグマの生態捕獲調査があるということで、安全のため、羅臼側の海岸の調査を実施しました。知床岬にもっとも近い相泊の海岸から標津に至る海岸の目視観測です。6月8日はウトロ側の調査地であるルシャ湾に向かい、設置していたタイムラプスカメラのデータ回収と再設置、写真測量のためのGCPの設置と測位、Phamtom 4RTKを用いたSfM-MVS写真測量、そしてMatrice 300RTKに搭載したサーマルイメージャーによる熱赤外画像の撮影を実施しました。6月9日は、より広範囲の海岸を対象に同様な作業を繰り返し、6月10日は漂着ごみの計量調査を実施して、ほぼ予定していた作業を終えることができました。これらの現地調査と並行し、知床のウトロで漂着ごみ問題に取り組む何名かの方々とミーティングを行い、研究成果と実際のごみ問題の解決をつなげる方策について意見交換を行いました。
調査地では、昨年の晩秋から今冬にかけて、 高い波浪が生じたようで、2018年11月にこの調査を開始して以降、最大の地形と漂着ごみの変化が起こっていました。今後は得られたデータの解析を進め、漂着ごみの質量収支変化を明らかにします。次回は9月中旬以降の調査を予定しています。
なお、本研究の実施にあたっては、環境研究総合推進費による課題「世界自然遺産・知床をはじめとするオホーツク海南部海域の海氷・海洋変動予測と海洋生態系への気候変動リスク評価(代表 三寺史夫)」を使用させていただきました。
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