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8月 12

網走川と網走湖:その1

Seedlings of brackish-water clam

西網走漁業協同組合の皆さんによるヤマトシジミの種苗作業

一昨年から網走川流域の流域ガバナンスに興味を持って、修士課程の大学院生である倉野健人さん、藤島洸さんと一緒に調査を進めています。そもそものきっかけは、当時、北海道開発局におられた染井順一郎さんを通じてでした。アムール川流域とオホーツク海の越境環境保全を議論していた際、上流・下流問題の解決の難しさに直面していた私に、染井さんは日本で画期的な試みが進んでいることを教えてくれました。それは、網走川流域で開発局が進めていたサーモンアクションプランと呼ばれる「流域の農業と漁業が連携して河川環境の保全に取り組み、それをもって産品のブランド化を図るという地域づくりの試み」です。

土地利用の進んだ我が国では、利用の方法や内容に応じた様々な物質が河川に流入します。これらの物質は、河川を通じて下流に輸送され、汽水域や沿岸部に蓄積します。たとえば、農業で使用される化学肥料は、河川への窒素やリンの負荷を高め、時に汽水域や沿岸域で赤潮の発生を引き起こします。このため、日本の各地で農業と漁業という基幹的な一次産業が対立する図式が繰り返されてきました。アムール川とオホーツク海の間で成り立つ鉄を介した陸海連環もその一事例と考えます。

「日本でできないことを、どうして大陸の国々に伝えられるだろうか?」。染井順一郎さんの問いかけは、とても大きなものでした。アムール川の問題に対して、なにかヒントが得られるかもしれない。こうして、網走川流域との付き合いが始まりました。

つづく

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