Books published so far

白岩孝行:「鉄が結ぶ「巨大魚附林」−アムール・オホーツクシステム」、桜井泰憲・大島慶一郎・大泰司紀之編著『オホーツクの生態系とその保全』、北海道大学出版会、47-52. (2013)

白岩孝行:アムール・オホーツクコンソーシアムの設立とその意義、桜井泰憲・大島慶一郎・大泰司紀之編著『オホーツクの生態系とその保全』、北海道大学出版会、439−441. (2013)

Taniguchi. M. and T. Shiraiwa (eds.) “The Dilemma of Boundaries –Towards a New Concept of Catchment-”, Springer, 275p. (2012)

白岩孝行:「第5章 オホーツク海の命運を握るアムール川」、田畑伸一郎・江淵直人編著『環オホーツク海地域の環境と経済』、北海道大学出版会、117-138. (2012)

白岩孝行:「アムール川とオホーツク海・親潮」、向井宏監修『森と海をむすぶ川』、京都大学学術出版会、48-65. (2012)

白岩孝行:「アムールはオホーツクの恋人」、北方林学会編著『北海道の森林』、北海道新聞社、291-292. (2011)

白岩孝行:「アムール川からオホーツク海・親潮へと至る鉄の道の発見」、NHKスペシャル「日本列島」プロジェクト編著『NHKスペシャル 日本列島奇跡の大自然』、132-135. (2011)

白岩孝行:『魚附林の地球環境学-親潮・オホーツク海を育むアムール川』、昭和堂、226p. (2011)

杉山慎・白岩孝行:「第27章 氷河と氷河時代」、在田一則他編著『地球惑星科学入門』、北海道大学出版会、313-322. (2010)

白岩孝行:「氷河の変動と地域社会への影響」、総合地球環境学研究所編『地球環境学事典』、弘文堂、56-57. (2010)

白岩孝行:「魚附林 森と海をつなぐ物質循環と生命」、総合地球環境学研究所編『地球環境学事典』、弘文堂、84-85. (2010)

白岩孝行:「ベーリング氷河 世界最大の山岳氷河-」、加藤碵一他編『宇宙から見た地形 –日本と世界-』、朝倉書店、24-27. (2010)

白岩孝行:「風と水で結ばれた巨大魚付林」、総合地球環境学研究所編『地球の処方箋 環境問題の根源に迫る』、昭和堂、192-195. (2008)

白岩孝行:「第8章 氷河」、(社)日本雪氷学会監修『雪と氷の事典』、朝倉書店、277-284. (2005)

白岩孝行:「第1章 雪氷圏」、(社)日本雪氷学会監修『雪と氷の事典』、朝倉書店、4-10. (2005)

白岩孝行:「氷床下の湖」、国立極地研究所編『南極・北極の百科事典』, 丸善, 410-412. (2004)

小野有五・藤井理行・上田豊・伏見碩二・成瀬廉二・白岩孝行:『基礎雪氷学講座 IV 氷河』, 古今書院, 312p.(1997)

白岩孝行:「第10章 アルプス」、C. Embleton 編著、大矢雅彦・坂幸恭監訳『ヨーロッパの地形(上)』, 大明堂、331-384. (1997)

白岩孝行:「第14章 アペニン山脈とシシリー島」、 C. Embleton編著、大矢雅彦・坂幸恭監訳『ヨーロッパの地形(下)』, 大明堂、492-513.(1997)

白岩孝行:「キナバル」、岩田修二・小疇尚・小野有五編『世界の山々-アジア・オセアニア編』 , 古今書院、31-32.(1995)

白岩孝行:「中央チベット」、岩田修二・小疇尚・小野有五編『世界の山々-アジア・オセアニア編』, 古今書院、63-64.(1995)

秋田谷英次、成瀬廉二、白岩孝行:「第1章 阿寒の気象と積雪」、財団法人前田一歩園財団編『阿寒国立公園の自然(上巻)第1章』 ,219-262. (1993)

白岩孝行:「剣岳」、小泉武栄・清水長正編『山の自然学入門』、古今書院、99.(1992)

10月10-11日 国立極地研究所 設営専門部会環境分科会(東京)

10月19日 国立大学附置研究所・センター長会議 第3部会シンポジウム(仙台)

11月15−17日 網走湖調査(網走)

11月23-26日 私用にて休暇(沖縄)

12月5-8日 総合地球環境学研究所 年次報告会(京都)

12月15日 雪氷学会北海道支部地域講演会(小樽)

12月16日 霧多布湿原センター講演会(浜中)

12月19日 富山大学 極東地域研究セミナー2012(富山)

12月20日 富山大学極東地域研究センターシンポジウム(富山)

Seedlings of brackish-water clam

西網走漁業協同組合の皆さんによるヤマトシジミの種苗作業

一昨年から網走川流域の流域ガバナンスに興味を持って、修士課程の大学院生である倉野健人さん、藤島洸さんと一緒に調査を進めています。そもそものきっかけは、当時、北海道開発局におられた染井順一郎さんを通じてでした。アムール川流域とオホーツク海の越境環境保全を議論していた際、上流・下流問題の解決の難しさに直面していた私に、染井さんは日本で画期的な試みが進んでいることを教えてくれました。それは、網走川流域で開発局が進めていたサーモンアクションプランと呼ばれる「流域の農業と漁業が連携して河川環境の保全に取り組み、それをもって産品のブランド化を図るという地域づくりの試み」です。

土地利用の進んだ我が国では、利用の方法や内容に応じた様々な物質が河川に流入します。これらの物質は、河川を通じて下流に輸送され、汽水域や沿岸部に蓄積します。たとえば、農業で使用される化学肥料は、河川への窒素やリンの負荷を高め、時に汽水域や沿岸域で赤潮の発生を引き起こします。このため、日本の各地で農業と漁業という基幹的な一次産業が対立する図式が繰り返されてきました。アムール川とオホーツク海の間で成り立つ鉄を介した陸海連環もその一事例と考えます。

「日本でできないことを、どうして大陸の国々に伝えられるだろうか?」。染井順一郎さんの問いかけは、とても大きなものでした。アムール川の問題に対して、なにかヒントが得られるかもしれない。こうして、網走川流域との付き合いが始まりました。

つづく

環境白書は、環境省が毎年発行する白書です。いわば、日本の環境に関する国の公的な分析と政策の集大成なのですが、平成23年度版の環境白書に私たちのプロジェクトが解明したアムール川とオホーツク海を結ぶ鉄仮説が紹介されていました。

平成23年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書

該当の記述はp.39-41にあります。図2-2-5の図にある溶存鉄の輸送を示す矢印が宗谷海峡を通っていたり(正しくはサハリンの東岸を南流)、アムール川の中国名が「黒河」とか「黒水」と記述されていたり(正しくは、黒竜江)と気になる点はありますが、研究プロジェクトの成果がこうして国の公式な報告書に採用されるのは光栄なことだと思っています。

プロジェクトが終了して早3年。この9月末には3年ぶりにアムール川の国際共同観測を実施します。まだたくさんある未解明の課題の解決に向け、アムール川の研究はこれからも続きます。

7月13日 公益社団法人雪氷学会 北海道支部理事会

7月18-21日 休暇

8月6-9日 北海道教育大学 集中講義「環境と物理学」

8月14-17日 網走川流域調査

8月20-21日 函館国際科学祭

8月27-28日 北海道大学大学院 環境科学院 入試

9月9-15日 フィンランド出張

9月17-18日 私用で休暇(東京)

9月21日-10月1日 アムール川四カ国共同調査(三井物産環境基金による)

The Dilemma of Boundaries

The Dilemma of Boundaries
Toward a New Concept of Catchment

Series: Global Environmental Studies
Taniguchi, Makoto; Shiraiwa, Takayuki (Eds.)
2012, XIII, 275 p. 82 illus., 47 in color.
ISBN 978-4-431-54034-2
DOI: 10.1007/978-4-431-54035-9_12

早いもので、今から3年近く前の2009年10月2日、京都の総合地球環境学研究所が、第4回地球研国際シンポジウム『境界のジレンマ-新しい流域概念の構築に向けて-』と題した国際シンポジウムを開催しました。このシンポジウムは、当時終了まで一年を残した私たちのアムール・オホーツクプロジェクトと、終了まで二年あった谷口真人さんの地下プロジェクトが共同で開催したシンポジウムです。
 我々は、オホーツク海や親潮の海洋基礎生産に与えるアムール川の影響を解明していく過程で、陸水の水文・生物地球化学過程が、海洋の種々の物理生物化学過程と切り離されて議論されている現実を痛切に感じていました。一方で、谷口さんらは、アジアの大都市の地下水を調べていく過程で、地表水と地下水が学問上も社会においても分断されて扱われてきた現実に直面していました。我々を取り巻く環境の理解において、たとえば陸水と海水を分ける海岸線や、地表水と地下水を分ける地表面が、自然科学的にも社会科学的にも極めて大きな影響をもつ境界としてクローズアップされてきたわけです。
 二つのプロジェクトに所属する研究者が議論を重ね、世界各地で環境システムに果たす様々な境界の役割を集め、その功罪と将来課題を議論しました。そして、我々が通常考えている流域だとか、集水域という概念を発展させ、様々なCatchmentが定義できることを示すことができました。
 3年かかりましたが、ようやくシンポジウムの成果が本になりました。世界の環境学に貢献できれば、編著者としてこれにまさる幸せはありません。是非、みかけたら手にとってご覧ください。

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熱い議論が続いた懇親会

今日から三日間、富山でシンポジウムを開きます。公益社団法人 日本雪氷学会 氷河情報センターが主催、立山カルデラ砂防博物館が共催する公開シンポジウムです。福井幸太郎さんと飯田肇さんの画期的な論文が雪氷学会の学術誌”雪氷”に発表されたことを契機に、多年性雪渓と氷河の関係について日本を代表する研究者が議論する内容です。

剱・立山山麓は、自分が卒業論文で氷河地形研究に取り組んだ地です。まさか氷河そのものが存在するとは考えてもいませんでした。久々の再訪が楽しみです。

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日ロ極東フォーラム 環境部会にて

本日、東北大学が主催する第71回生態適応セミナー (Aセミナー)に参加します。東北大学が進める生態適応グローバルCOEの下で開かれるセミナーです。タイガの森フォーラムと連携して、今夏、アムール川流域で大学院生の実習プログラムを企画しておられます。ビキン川流域のタイガの森とそこで暮らす先住民族を訪ね、持続可能な社会を考えるという素晴らしいプログラムです。

このタイガの森フォーラムとは、5月初めにウラジオストックで開かれた日ロ極東フォーラム環境部会において、ロシアの研究者と共同で共同声明を出しました。

少しずつ、志を同じくする人たちとのネットワークが広がりつつあります。

Discharge measurement

電磁流速計を用いた河川流量観測の実習

私が担当している北海道大学大学院 環境科学研究院 環境起学専攻 人間生態システムコースのカリキュラムのひとつである統合環境調査法実習が6月16〜20日の5日間にわたって行われました。中国に出かけていたため、一日遅れで、17日から参加してきました。

17日は早朝に札幌を出る時から雨。十勝に入ると激しい雨が降っており、トッタベツ川の観察を終えた本隊と帯広駅で昼に合流。午後の実習は取りやめ、十勝岳温泉で汗を流しました。中国から休みなしでの参加だったので、いい休息になりました。泊まりは十勝清水の旧小学校。

18日の午前中は、十勝川水系の渋山川で砂防ダムの建設に伴って生じた下流部の下方浸食の現状を観察しました。人間の努力が裏目裏目に出る河川改修の難しさを学びました。その後、高速道路を利用して、足寄経由で網走川流域に移動。河川流量観測を学び、河川水のサンプリングを複数回繰り返しました。その他、pH,水温、濁度などの測定法を学んで能取湖畔にある網走市の水産科学センターに投宿。

19日は汽水域でサンプリングを行った後、支流のひとつであるキキン川流域の土地利用を観察。その後、津別町の有機酪農家でいらっしゃる山田照夫さんの牧場におじゃまし、有機酪農への取り組みについてお話を伺いました。津別町で昼食をとった後は、網走川で実践されている多自然型川づくりの現場を観察し、16:00過ぎから水産科学センターで網走市水産課の渡部さんと、網走漁業組合の新谷さんに網走の漁業の現状と流域保全の取り組みについてお話を伺いました。また、網走川をフィールドに修士論文を準備している倉野君と藤島君が、研究の中間発表を披露しました。夜は、多くの皆さんに集まっていただき、新谷さんにいただいた立派なホタテを使ってバーベキュー。ハッピーな飲み会となりました。

20日は台風の影響で風の強い中、石北峠経由で札幌に戻りました。途中、塩別つるつる温泉で汗を流してきました。

この実習が終了すると、修士1年生の皆さんもいよいよ本格的に修士論文のテーマ選びが始まります。

Research vessel of the Heilongjian Environmental Monitoring Center

中国より帰国しました。あと6時間したら、十勝・網走で行われる野外実習に出かけます。戻りは20日の夜。毎年行われている環境科学院 環境起学専攻 人間生態システムコースの実習です。海岸地形、河川地形、河川水質・水量観測、測量、露頭観察などについて学びます。

上の写真はハルビンで見学させていただいた黒竜江省環境保護局環境監視センター所有の松花江の観測船。ハルビンでの会議報告は、また機会を改めて書きます。会議と9月の共同観測クルーズの打ち合わせともに順調に進みました。