古今書院が発行している月刊誌「地理」2020年7月号に「シベリアの河川と近年の環境変化」と題して寄稿させていただきました。この号は「ロシアの大地と人」と題した特集号です。温暖化で変化が著しいシベリアのオビ川、エニセイ川、レナ川の河川流量とアムール川で進むダム開発計画などに触れました。
Onishi, T. and Shiraiwa, T. (2020) Land and ocean connection through iron transport by rivers -the case of the Amur-Okhotsk ecosystem (Giant Fish-Breeding Forest). In Nagothu, U.S.(ed.) The Bioeconomy Approach-constrains and opportunities for sustainable development-, Routledge, 45-64.
Pokhrel, A., Kawamura, K., Kunwar, B., Ono, K., Tsushima, A., Seki, O., Matoba, S. and Shiraiwa, T. (2020) Ice core records of leveglucosan and dehydroabietic and vanillin acids from Aurora Peak in Alaska since the 1660s: a proxy signal of biomass-burning activities in the Northern Pacific Rim, Atmospheric Chemistry and Physics, 20, 597-612.
地球温暖化で変化するオホーツク海の実態を知るべく、外務省と環境省の主催、ロシア天然資源環境省の共催で、今春、オホーツク海の海洋生態系に関するワークショップが東京で開催されました。この度、日露二カ国語で書かれた報告書が公開されましたので、お知らせします。
第5回日露隣接地域生態系保全協力ワークショップ報告書(日露2ヶ国語)
日露隣接地域生態系保全協力の活動についてはこちら
8月24日から9月7日にかけて、北海道大学環境科学院 国際南極学カリキュラムの一貫として行われているスイスアルプス氷河実習に引率の立場で参加させていただきました。4月から座学と札幌近郊の山々で行った様々な野外活動の経験を生かし、7名の大学院生がアルプスの氷河を舞台に雪氷学・地形学・地質学の実習を行いました。
今年も様々な分野を専攻する大学院生が共同で氷河や河川に関わる実習プログラムに取り組み、好天の中、スイスの自然を満喫しました。この経験を糧とし、それぞれの分野で更なる活躍をして欲しいと思っています。
2019年8月4日に放映されたTBS世界遺産「アラスカ・カナダの氷河地帯 〜 アラスカ 氷河が崩れ落ちる湾(アメリカ・カナダ)」を監修という立場でお手伝いさせていただきました。アラスカ南部のグレーシャーベイ国立公園の氷河とフィヨルド、そしてそこに暮らす野生生物の姿に焦点を当てたプログラムです。カービング氷河が崩れ落ちる映像、氷河内の融氷水路、ムーランなどのおなじみの氷河現象はもちろん、今回は氷河がフィヨルドの海洋生態系に果たす役割に注目しました。
海の生産性に果たす河川の役割については様々な研究がありますが、海域の生産性に果たす氷河の役割の研究は緒についたばかりです。グリーンランドの氷河とフィヨルドで行われている研究によれば、カービング氷河の底面から流出する氷河の融解水がフィヨルドの海域において鉛直循環を促し、これによって深層の栄養塩が表層に輸送され、フィヨルドの生産性を高めている可能性が指摘されています。
詳しい説明はできませんでしたが、今回の番組ではこの新しい視点も取り入れていただきました。
2002年〜2008年にかけて、アラスカやカナダの氷河の研究に携わる機会がありましたが、この番組を観て、久しぶりにアラスカを訪ねてみたくなりました。
低温科学研究所 共同研究集会
シンポジウム「変化する環オホーツク陸域・海域環境と今後の展望」
日時:2019 年 7 月 26 日(金) 09:00~7 月 27 日(土)16:00 場所:北海道大学 低温科学研究所 3F 講堂
主催:北海道大学 低温科学研究所
連絡先:低温科学研究所 porc-info@pop.lowtem.hokudai.ac.jp
環オホーツク観測研究センターは、オホーツク海を中心とする北東ユーラシアから西部北太平洋にわたる地域(環オホーツク圏)が地球規模の環境変動に果たす役割を解明すること、また気候変動から受けるインパクトを正しく評価することを目的とし、その国際研究拠点となることを目指して平成16年4月に設立されました。これまで、短波海洋レーダ観測、衛星観測、船舶観測、現地調査等を通し、オホーツク海及びその周辺地域の環境変動モニタリングを進めてきました。また、ロシアをはじめとする国際的な研究ネットワーク構築を進めております。近年、環オホーツク圏では温暖化が進み、シベリア高気圧 の急速な弱化、オホーツク海季節海氷域の減少、海洋中層の温暖化、陸域雪氷圏の面的変化としてその影響が鋭敏に現れ始めています。
当センターは本年設立15周年を迎えました。これを機にシンポジウム「変化する環オホーツク陸域・海域環境と今後の展望」を開催し、これまで環オホー ツク研究に関わってくださった研究者が一堂に会し、多分野に亘って進めてきた環オホーツク研究を総括するとともに、今後の展望を話し合いました。
このシンポジウムでの意見交換を踏まえ、環オホーツク研究観測研究センターは今年度中を目処に、今後の研究の方向性について取りまとめたいと思っております。
4月5-8日 別寒辺牛川調査
4月13-14日 編集会議(東京)
4月27-28日 手稲山実習
5月15-19日 統合環境地理調査法実習(十勝地方)
5月20日 修士論文中間発表
5月23-24日 編集会議(東京)
5月30日-6月3日 別寒辺牛川調査
6月8日 塩谷丸山実習
6月12-15日 知床 漂着ゴミ調査
6月16日 編集会議(東京)
6月21日 修士論文中間発表
6月29-30日 編集会議(東京)
7月11-12日 編集会議(東京)
7月26-27日 シンポジウム「変化する環オホーツク陸域・海域環境と今後の展望」(札幌)
8月2日-5日 別寒辺牛川調査
8月22-23日 北海道大学大学院 環境科学院 入試
8月24日-9月7日 スイス実習
9月14日 シニア自然大学校講義(大阪)
10月19日-21日 別寒辺牛川調査
10月24日-25日 別寒辺牛川調査
11月7-11日 知床 漂着ゴミ調査
11月21日 修士論文中間発表
11月23-24日 編集会議(東京)
11月28-29日 母子里・名寄河川調査
12月21-22日 編集会議(東京)
2020年
1月21-24日 雪氷実習(母子里)
2月3日 低温研 共同利用研究集会
2月5日 日露隣接地域生態系保全推進プログラム委員会
2月10-12日 修士論文発表会
2月16-18日 知床調査
2月20-21日 大学院入試
3月25日 科研費とりまとめ研究会(札幌)
3月30-31日 編集会議(東京)
アムール川・アムールリマン・オホーツク海のミニチュア版として、別寒辺牛川・厚岸湖・厚岸湾を選んで陸面から外洋に至る物質循環の研究が始まって丸一年が過ぎ、今年最後の観測を終えました。慣れない感潮河川の観測に四苦八苦しながらも、厚岸湾への河川流出量を定量的に把握するために、大学院生と共に2ケ月に1回のペースで厚岸を訪ねました。最後の観測は、結氷した水面を割っての観測でした。
一年を通して訪ねることではじめて見えることも多々ありました。一番印象的なのは、湿原の淡水貯留機能。どんなにたくさん雨が降っても、しっかりと湿原に貯めて、じわじわっと水を流す河川群には驚きました。感潮河川ゆえの塩水遡上と共に、川から海への物質輸送に対して大きな影響を与える機能です。
ミニチュアと言っても、それはアムール川と比べるからであって、調査をするには十分すぎるくらい壮大なフィールドです。来年は、更に詳細な過程を解明すべく、別寒辺牛川水系に通いたいと思います。