Archive for the ‘outreach’ Category

例年は北海道でもっとも寒い母子里(もしり)に行き、泊まりがけで行う雪氷実習IIですが、昨年に続き、今年も札幌で開催することになりました。2週間の期間にわたり、北大キャンパスや札幌近郊の手稲山を舞台に、積雪断面観測、広域積雪観測、積雪・土壌熱輸送観測、気象観測を体験します。今年参加した大学院生は12名。札幌だけでなく、函館や名寄からの参加者もおりました。

私が主に担当したのは、積雪・土壌内での熱輸送の観測です。12月中旬に北大キャンパスの農場に設置した合計8深度の地温計・雪温計のデータから、鉛直一次元の熱輸送を計算し、積雪下面における熱収支を求めるという課題でした。

年末からの積雪により、今年は雪に悩まされる札幌の街ですが、雪氷実習にとっては幸いでした。広域積雪調査では、手稲山の麓からスキー場に至る高度別の積雪深・積雪水量観測を実施し、標高でこれらのパラメータがどのように変化するかを学びました。

来年こそ、母子里の実習が復活し、大学院生の皆さんに-20℃の世界を体験してもらいたいと思っています。

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今年は6月下旬と10月中旬に知床のオホーツク海沿岸で海岸漂着ごみの調査を実施しました。調査地はすでに積雪のために入域できないため、今回は今年最後の調査として、12月5日〜8日にかけて、当地で海岸漂着ごみに関わる人々に聞き取り調査を実施しました。聞き取り調査の対象は、地方自治体、漁業協同組合、環境省自然保護官、ボランティア、管理団体などの諸機関・関係者です。

海岸漂着ごみは、誰しもが問題と思っていながらも、責任の所在があいまいであることや処理のための予算が必要であることにより、なかなか解決が難しい問題です。ましてや、知床世界自然遺産内は、険しい自然と世界自然遺産の管理体制により、誰でも簡単にアクセスできるわけではないので、回収も一筋縄ではいきません。聞き取り調査により、それぞれの機関や関係者が多くの努力を割いているにもかかわらず、なかなか解決には至っていないことがわかりました。

我々の役割は、自然科学的な方法に基づいて、漂着ごみの経年モニタリングのデータから、漂着ごみの質量収支の時間変化を明らかにすることです。漂着ごみの内容物、体積と重量、堆積・侵食のメカニズムと発生時期が明らかになれば、回収のタイミングや回収の頻度などについて、実際に漂着ごみ問題の解決に取り組む人々に情報を提供できるのではないかと考えています。

皆さんから聞き取った情報を参考にしながら、来年度も調査を継続したいと思っています。なお、本研究は、当研究室の西川穂波の修士研究として実施しました。調査は晴天に恵まれ、冠雪した美しい知床連山を仰ぎながら実施できました。調査にご協力くださった関係諸機関・個人の皆様に心よりお礼申し上げます。

先日、全国の自然地理学を専攻する大学生・大学院生を対象としたオンラインセミナーでアムール川とオホーツク海を対象とする魚付き林の話をさせていただきました。講演終了後、1人の学生さんから勉強に使えそうな教科書を訊ねられましたので、以下、最初に読んだら勉強になりそうな本を列記します。これらの本で概略を知った後に関連論文を読んだら良いと思います。

山下洋監修・京都大学フィールド科学教育研究センター編集(2011)「[改訂増補] 森里海連環学: 森から海までの統合的管理を目指して」京都大学学術出版会

向井宏監修・京都大学フィールド科学教育研究センター編集(2012)「森と海をむすぶ川: 沿岸域再生のために」京都大学学術出版会

松永勝彦著 (2010) 「森が消えれば海も死ぬ―陸と海を結ぶ生態学 第2版」 講談社 ブルーバックス

川那部浩哉監修・水野信彦監修・中村太士編集 (2013) 「河川生態学」 講談社

以上

「全国の自然地理学に興味をもつ学生が一堂に会して、自然地理学の俯瞰的な視点とその意義や魅力を知る」ことを目的にオンラインで運営されている自然地理学セミナーでお話しさせていただける機会をいただきました。12月11日(土) 13:00-14:30です。「陸と海をつなぐ地理学」というタイトルで、魚つき林の話をさせていただく予定です。全国の自然地理学を専攻する学部生・院生の皆さんと交流するのを楽しみにしています。参加希望の皆さんは、指導教員ないしウェブサイトの事務局を通じてお申し込みください。

少し古い資料ですが、三井物産環境基金(2011-2013)にご支援いただき実行したプロジェクトの報告書を公開させていただきます。

アムール・オホーツクコンソーシアム編
「オホーツク海の越境環境保全に向けた認識共同体の構築と実践」

自然科学研究で得られた成果を社会に還元するための一つの試みです。

東京書籍が発行する高校社会の教育情報誌 ニューサポート高校「社会」vol.36(2021年秋号)に、「地理用語としての造山帯の退場」というコラムを書かせていただきました。

当研究室で2018年から研究を開始した世界自然遺産 知床の海岸に堆積する漂着ゴミの問題がメディアで取り上げられました。まだ研究の途上ですが、遺産内の核心地域の海岸におけるゴミの現状について映像とコメントを提供させていただきました。

NHK #知るトコ、知床チャンネル 第2回「海洋ゴミと知床」

地元のボランティアのみなさんが自治体や環境省の協力を得ながら清掃活動を行っていますが、そのゴミの量は膨大で、しかも漁具などの大型ごみ(漁網やロープ)が多いため、なかなか漂着ゴミの量は減りません。また、核心地域という一般の立ち入りが厳しく制限された地域でもあるため、ボランティア活動もなかなか簡単ではないというのが現状のようです。

当研究室では、UAV(ドローン)とSfM技術を用いて漂着ゴミと流木の堆積変化をモニタリングし、漂着ゴミの質量収支を解明したいと思っております。これにより、どの時期にどれだけのゴミを回収すれば、現状の改善に繋がるのかを提言できると考えます。

2020年はコロナ禍で調査が遅れ気味ですが、9月と11月に現地調査を行う予定です。

古今書院が発行している月刊誌「地理」2020年7月号に「シベリアの河川と近年の環境変化」と題して寄稿させていただきました。この号は「ロシアの大地と人」と題した特集号です。温暖化で変化が著しいシベリアのオビ川、エニセイ川、レナ川の河川流量とアムール川で進むダム開発計画などに触れました。

地球温暖化で変化するオホーツク海の実態を知るべく、外務省と環境省の主催、ロシア天然資源環境省の共催で、今春、オホーツク海の海洋生態系に関するワークショップが東京で開催されました。この度、日露二カ国語で書かれた報告書が公開されましたので、お知らせします。

第5回日露隣接地域生態系保全協力ワークショップ報告書(日露2ヶ国語)

日露隣接地域生態系保全協力の活動についてはこちら

8月24日から9月7日にかけて、北海道大学環境科学院 国際南極学カリキュラムの一貫として行われているスイスアルプス氷河実習に引率の立場で参加させていただきました。4月から座学と札幌近郊の山々で行った様々な野外活動の経験を生かし、7名の大学院生がアルプスの氷河を舞台に雪氷学・地形学・地質学の実習を行いました。

今年も様々な分野を専攻する大学院生が共同で氷河や河川に関わる実習プログラムに取り組み、好天の中、スイスの自然を満喫しました。この経験を糧とし、それぞれの分野で更なる活躍をして欲しいと思っています。